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テーマ:食べ物あれこれ(50374)
カテゴリ:無題
以前、私たちのうどん店がご飯屋だった頃、
私がご飯を炊くと必ず文句を言う人がいました。 その人は私に固くてふくらみや粘りのないご飯を炊かせようと躍起になっていました。 大勢の前で芯のあるご飯ときちんと炊けたご飯を試食させ、 私に芯のある方を「おいしい」と言わせようとしました。 ウチの店で仕入れてあるお米は「コシヒカリ」だったので 普通に炊くとふっくらとした粘りとつやのあるご飯になります。 それを浸漬時間無しで早炊きにすると硬くて芯のあるご飯になります。 それが彼女の「好み」だと気付いたのは、彼女が退職したあとです。 貧しい農家で育った彼女は不幸な結婚を経て現在は独身です。 幸福な子供時代に母親が食べさせてくれたご飯は「中手新千本」だったのでしょう。 粘りとつやのない硬いご飯、 それが彼女の幸せな記憶と共に、好みの味となっていったのです。 ですから私の炊いたふっくらとしてつやと粘りのある 「コシヒカリ」らしい甘味の強いご飯は我慢ならなかったのです。 実際にはコシヒカリの味を好む人が多かったので 彼女が休みの日にきちんと炊いたご飯は、お客様には喜ばれていたのです。 「コシヒカリ」を使って彼女の大好きな「中手新千本」の味に炊いたご飯は 本当は不評だったのです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009.04.21 10:16:15
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