国宝とは何物ぞ。

宝とは道心なり。

道心あるの人を名づけて国宝となす。



道心あるの人

好事を他に与え

悪事を己に向え

己を忘れ

他を利するは

慈悲の極みなり。　　（伝教大師・最澄)



自分さえよければいい。

自分のことしか考えられない。

人を押しのけてでも、

自分が先にいい目を見たい。


眼中にあるのは、

自分の利益と自分の幸福のみ。

自分の為すあらゆる行為に代償を求める。


そんな人が多い。

それもまたよし。


が、その中で、

我が財を捨てる、我が身を捨てる、我が命を捨てる、

捨財、捨身、捨命の人もいる。

個我を捨てきらないと、できぬ行。


他人の不幸やこころの痛みを、

我が痛みとして感じられるのが、

人間にだけあたえられたやさしさ。

その想像力こそが、慈愛。


自利忘他の道もあり。

自利利他の道もあり。

忘己利他の道もあり。


実践し、体験するがよい。


岐路の前にしばらくたたずみ、

決して道を行く。


命をどう使うかの選択権、決定権は、

我が心のうちにあり。