富士山で絶滅危惧種のチョウのボランティアをした話
1年前、富士山のふもとで、絶滅危惧種に指定されている「ミヤマシジミ」の生態をウォッチするボランティアに1泊2日で参加した。ボランティアでお手伝いした研究の目的は、ミヤマシジミを減らしている原因を突き止めるために、ひたすらミヤマシジミを観察し、生態を調査するというもの。ミヤマシジミは「コマツナギ」という特殊な草しか食べない。ムシャムシャと食べ続けておおきくなっていくのだが、幼虫の間、外敵から身を守る方法がかなり変わっている。ヒントは「アリンコ」。ミヤマシジミの幼虫は、体から、アリ達の普段のエサよりもずっと魅力的なごちそうの「ミツ?」を出して、それをアリに提供することで、アリに自分の体を守って貰う。共生、というやつ。一匹の幼虫を守るアリは、いつも決まったアリらしい。「介護アリ」と呼ばれている。入れ替わり立ち代り、アリのヘルパーさんが代わるのではなく、一匹のアリに数匹でずっと仕える。不思議なことに、幼虫が「ごちそう」を出さないサナギになってからも、アリの「介護」は続く。ありにとってはメリットが無いのに、そこはまだ1年前には解明できてなかった。…という研究が、日本人の研究者を筆頭に、今度、晴れて国際プロジェクトになった。国内だけでなく、全世界のいろんな人が、この研究に参加するようになるようだ。本当に嬉しく思った。この研究は、河口湖フィールドセンター自然共生研究室室長の渡邊さんという人が中心となって行っていたのだけれど、この人は、本当にすごい人だなと思っていた。普通だったら、ボランティアするにあたって、研究者からボランティアに、A4ぺら2枚程度の資料が配られれば、まぁ…こんなもんですよね。という感じだが、この渡辺さんは、どんな人が参加しても、ミヤマシジミのとりこになるような、詳しく丁寧にカラーで作った資料を、クリアファイル?に製本して配り、休み時間、調査を終えた後の時間も、きっと疲れているのにボランティアに近くの森の木や生き物について詳しく教えてくれるのに費やしてくれたり、研究所特製の「クロモジ(樹木の名前)酒」「コケモモ酒」を賞味させて喜ばせてくれたり、美味しくて珍しい山梨のおいも「ヤーコン」を私費でおみやげにくれて皆を驚かせたり、当日撮影した写真を焼きまして、ボランティア全員にあとで紙焼きで送ってくれたり。参加するボランティアにとってはたった1泊のことなのに、先生にとっては通りすがりのボランティア達なのに、ほぼ、毎日毎日、初対面のボランティア全員に120%喜んで帰ってもらえるように、研究に協力してくれた感謝が伝わるようにと、精一杯接してくださった。だから、この調査が国際プロジェクトになったとき、「やっぱりなー」と思った。