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カテゴリ:今日の絵本
今日は横浜にある「LD発達相談センター・心理相談室」へ娘のサキ(小5)と行って来ました。
サキは月に2回の割合で、ここでカウンセリングを受け始めました。「カウンセリング」と言っても、ず~っと話をしているのではなく、約50分間、そこで担当の先生といろんな遊びをしているのです。箱庭療法やオセロなどのゲーム、絵を描いたり、ドミノ遊びをしたり、、、。毎回何か結果が出る、という性質のものではなく、力を抜いて心を開放する時間、という感じかな? 先生はとても穏やかな雰囲気の方で、サキはこの日を心待ちにしています。その間、私は待合室で本を読んだり、他のお母さんたちと会話したりして待ち、サキが終わると今度は私が先生に、家での娘の様子などを話します。 今日も待合室で本を読んでいると、小さな男の子とそのお母さんが(恐らくお兄ちゃんかお姉ちゃんを)待っていました。男の子が引っ張り出したたくさんの絵本やおもちゃの片付けを手伝っているとき、ふと一冊の写真絵本が私の目にとまりました。 開かれたページの外国人の少女の写真に吸い寄せられるように文章を読み始める私。ほどなくそれは「チェルノブイリ原発事故」に関する本だと気がつきました。サキはこの夏、ロシアでホームステイしてきたばかり。その本以外の本をすべて本棚にしまった私は、その本を手に、再びソファに座り、最初からじっくり読んでみたのです。 1986年4月26日、旧ソビエト連邦ウクライナ共和国にあるチェルノブイリ原子力発電所4号炉で起きた大きな事故。おびただしい放射線が放出され、自然と人間に甚大な被害をもたらしたこの被災地に、一人の日本人写真家が足を踏み入れました。それがこの本の作者、本橋成一氏です。 彼はチェチェルスクを訪れ、写真を撮りました。わずか一日そこにいるだけで、空気中の自然の放射線を2年分も浴びてしまう危険な状況の中で、生まれ育った土地をどうしても離れられないお年寄りたち。大地の恵みのトマト。それが放射線で汚染された土地から生まれた危険なものと知りつつ、老人がふしくれだった手で差し出す真っ赤なトマトを頬張る本橋氏は、最初にこの地を訪れたとき「もう二度とここへは来たくない」と思ったのに、それから13回も通うことになりました。 なぜそんな危険なことを? 「あとがき」は「游と楽へ」という2人の息子さんへ宛てた手紙でした。(以下、抜粋) ・・・U先生はいいました。 「写真をうつすということは、きみがうつしたいものを、きみがどんなつきあいかたができるか、だとおもう」と。 ・・・写真をうつすときにたいせつなのは、性能のいい写真機ではない、それをつかう技術でもないのだということを、教えられたのです。 ・・・「まさか......」 でも、それはたしかに植物で、小さく風にゆれているようでした。 ぼくは、その植物をこの目でたしかめたいとおもってしまった......。 こうして今日、「石棺」と二度目の対面をしました。ファインダーをのぞいた瞬間、やっぱり植物だ! すごくうれしくなりました。しかもそれは育っていたのです。その上、まわりにも小さな草が二、三本風にゆれています。 游、楽、なんていうことだろうね。放射性物質をふくんだ、いってみれば病んだ塵の中で根をはった植物たち。 ......いのちというのはなんて不思議でいとおしいのだろう。 恩師の言葉どおり、彼はチェチェルスクの人々と直接向き合い、触れ合うことで、本当のその土地に生きる人々の魂を撮り続けることができたのでしょう。そんな生活をしていたら、自分もいつ白血病にかかるかもしれない。それでも彼は自分自身の写真家としての生きる道を貫き、その一方で愛する息子さんたちに、写真と自らの想いを書き残したのでした。 胸がいっぱいになった私は、家に帰ってからインターネットで本橋氏について調べてみました。たくさんの賞を受賞されている中で、私が特に注目したのは、初めて監督をした「ナージャの村」で1998年「第17回土門拳賞」を受賞されていたことでした。 *土門拳さんは、私が大好きなリアリズム写真を確立した写真界の巨匠。(古寺やヒロシマの人々、こどもたちなどを肉眼を越える迫力で撮り続けた。)「死ぬことと生きること」という本を読んだ時には魂が揺さぶられるような気がしました。 久しぶりに「骨太の人」と出会えた☆と、嬉しくなりました。 ファンタジーの世界も私にとっては大切な世界ですが、やっぱり魂が震えるのはノンフィクション、ドキュメンタリーものです。 「ナージャの村」は、必ず観るつもりです。そのときはまた、感想をアップしますね。 私は芸術については,決して詳しくありません。歌手でも、演奏家でも、画家でも、写真家でも、私が強く惹かれるのは、作品だけでなく、その背景にあるその人の生き様や信念です。 今日はまた、私の大好きな人が一人増えました♪ ひなたまさみ ●「チェルノブイリからの風」(影書房) 本橋成一(もとはし せいいち) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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