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テーマ:☆ボクシング☆(642)
カテゴリ:ボクシング
(えっ、どうして!?)
いつものようにシャドーボクシングを終え、私はミット打ちのためにリングへ上がった。 その日思いがけずTトレーナーの代わりに、プロボクサーでブログ仲間でもある”闘うバイオリニスト”こと西垣さんが私のミット打ちの相手をしてくれることになり、私はウキウキしながらグローブをつけた。 ところが西垣さんが手につけているのは、ミットではなくグローブ。 「会長さん、これは…?」 「お母さん、どうぞどこでも打ってやってください」 って、それってスパーリングじゃん (ちょ、ちょっと待ってよ~~! 聞いてないぞ~~!) 私は、西垣さんとだけはしたくなかった。 以前彼がブログに、 「女性とスパーリングをすると凹む」 と書いていたからだ。 「知らない女性が僕に殴りかかってくると、”僕が一体何をしたというんだろう?”という気持ちになってしまう」 …そう、いつでも礼儀正しく真面目な彼はとても繊細な人だということを、私は知っていた。 「会長さん、ムリ!ムリ!」 慌てる私を無視して鳴り響く開始の音。 西垣さんがグローブをつけた両手を差し出してくる。 こうして、西垣さんとのスパーリングが、何の予告もなく突然始まってしまった! 速い。西垣さんは軽やかなフットワークでクルクル動く 五百久さんの時と同じく、またしても鬼ごっこのような状態。 (ジャブを入れなくては…) 西垣さんから打ってくることはない。 私が打たなければ、永遠に鬼ごっこのままである。 (こうなったら仕方ない!) 私は思いきってジャブを打ってみた。 パンッ! 西垣さんのグローブに当たる。 (ダメだ。やっぱり無理) その日は珍しく、サキ(小6)とヒデキ(小3)も見に来ていた。 「ママー、がんばれ~~♪」 ヒデキの声援が聞こえる。 (西垣さん、ごめんなさい!もう、やるしかありません) 私は覚悟を決めて、ジャブ、ワン・ツーと打ってみる。 リングの外では、会長や他の練習生たちも見ている。 ギャラリーがいると、ついつい燃えてしまう私(笑)。 やがて、会長の 「連打!連打!」 という声を合図に、調子に乗ってポコポコ連打まで打ってしまう。 西垣さんはうまく避けてくれるから、なかなかあたらない。 必死になった私は、思わずボディーに一発! 次の瞬間、ふと我に返り、ブログのことを思い出す。 「ごめんなさい!」 思わず謝ってしまう。 (これ、絶対にやりにくいから~!勘弁してよ~) …こんなことを繰り返すうち、1Rは終わってしまった。 ヒデキが水を持って、駆け寄ってくる。 「ほらママ、水だよ! ママ、(会長さんが)遠慮しなくていいって♪」 すっかりセコンド気分の息子。 「もう(これ以上は)いいですよ~」 と言ってみたが、またしても合図が鳴り、そのまま2Rへ突入。 私だけが打つ、という設定は、どう考えてもフェアではない。もちろん力の差からすれば当然のことかもしれないが、私からすると自分のやっていることは”何の罪もない可愛い弟をいじめるお姉ちゃん”のようにしか思えない。 闘争本能を奮い立たせて打ってみては、我に返って謝罪する… 結局、そんなことを最後まで繰り返し、とてもやりにくいスパーリングとなった。 それでも、西垣さんの軽やかな動きを見るうち、 (あっ、ワルツだ) と、私は思った。 以前、元全日本チャンピオンの前溝さんに 「自分のフットワークのリズムを見つけなさい。 ワルツですよ」 とアドバイスをいただき、 (ボクシングなのに、ワルツ!?) と、驚いたことがあった。 今、自分の目の前でス~ッ、ス~ッと動いている西垣さんの身のこなしは、まさしくワルツのようだった。 (さすがバイオリンを弾く人だけに、 リズムの取り方が美しいなぁ) 思わず見とれるほどだった。 一方、私はまったく足が動かない。 スタミナもほとんどない。 (まだまだだなぁ~) 終わったときに私が思ったことは、 (いつかきっと西垣さんと同じ条件でスパーリングができるくらい上手になりたい!) その後サンドバッグを打ち始めると、すぐにヒデキがやってきた。 「ママさぁ~、本当は思いっきりミット打ちがやりたかったんだよね」 思わずヒデキにこぼすと、ヒデキはそのまま会長さんのところへ行き、 「ママがミット打ちやりたいんだって!」 と言ってしまった。 「お母さん、ミット打ちやりますか?」 何となく不完全燃焼だった私は、思わず、 「いいんですか?じゃ、1Rだけお願いします♪」 と答え、再びリングへ上がった。 ミットをつけて上がってきたのは、それまで会ったことのないトレーナーだった。 そのトレーナーは身長が175cm以上ありそうで、ミットの位置がいつもより少し高めだった。 それでも大好きなミット打ちができるのが嬉しくて、私は思いっきり打ち始めた。 右よりはずっと弱いはずの左ジャブの時から、ものすごい音が響く。 (この人、どれだけ強いんだよ~!?) と、自分でも思うほど(笑)の凄まじい音と、思いっきり叩いたときの少し痺れるような感触。 (これ、これ!やっぱりこれだよね~♪ か・い・か・ん) 打てば打つほど、調子が出てくる。 ボクシングって、最高に気持ちがいい 最後にそのトレーナーが一言、 「しかしものすごいパンチですね。 プロボクサーになった方がいいですよ♪」 と言ってくれ、 「ありがとうございました」 私はリングを下りた。 その後、いくつかのトレーニングをし、バンテージを外したところで、さっきのトレーナーがやってきた。 「お名前は?」 「ひなたです」 「私は、Kと言います」 「Kさんですか。どうも… えっ、Kさん!?」 (まさか!?) 次の瞬間、血の気がひいた。 「あの、もしかして…」 「はい。ご主人と同じ会社のKです」 ガーーーーーーーーーン!!! 確かに、トレーナーの中に主人と同じ会社に勤めている人がいる、と聞いたことはあった。 でも、まさかこの人だったとは! 何も知らない私は思いっきり、そう、思いっきりパンチを打ちまくっていたのだった。 「え?そ、そうでしたか。 え~っと…その…主人がいつもお世話になっています」 「ご主人なんて、一発でKO(ノックアウト)じゃないですか! 明日、ご主人に言っておきますよ。ハハハハ」 「ハハハ・・・」 (いや、笑えない、笑えない) 世間は本当に狭いですね~。 帰りの車の中でサキが突然、 「ママ、パンチを避けるのとか、習ってる?」 と尋ねてきた。 「ううん、まだだけど?」 「ふーん、やっぱりね。 だってママ、同じところしか打ってなかったもんね」 (グサッ!見てたの!?しかも、鋭い指摘かも?) 「最近ね、そういうのも少しずつ習い始めたんだよ」 「そっか。ミット打ちは相手が出してくれたところへ打てばいいけど、実際の試合じゃ、そうはいかないもんね」 (確かにそうだよ) 横からヒデキが、 「お姉ちゃんは偉そうなんだよ! 自分はできないくせにさっ」 (見ていないようで、サキもちゃんと見ていてくれたんだなぁ~) パンチだけは強いのかもしれないけど、基礎はまだ何もできていない私。 今度子どもたちに見てもらうときには、 今よりもうちょっとマシになっていたいものです。 西垣さん、Kさん、本当にありがとうございました さぁ、次は誰とスパーリングやるのかな? また報告させてくださいね♪ ひなたまさみ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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