|
カテゴリ:サキのあゆみ
「泣かないぞ!
絶対に、泣かないぞ!」 何度も自分に言い聞かせながら、私は学校へ向かって歩いていました。 昨日はサキ(小6)の小学校の卒業式。 5年生の後半から学校へ行けなくなり、市の適応指導教室へ通っているサキは、どうしても卒業式に出られそうもなく、サキの卒業式は、午後3時から、校長室で校長先生と担任の先生と私とサキとの4人でやることになっていました。 私はさんざん迷いました。 午前の卒業式に出るか、出ないか。 娘が小学校へ入学したときから、この日を迎えることを楽しみにしていた私は、そこにいるべき娘がいない卒業式に一人で参加する勇気が、なかなか湧きませんでした。 みじめな思いをしないかな? 心のどこかで、サキを責めたりしないかな? 他の保護者の人たちは、どんな目で私を見るかな? 周りの人たちも、 「そんなの辛すぎるでしょう? 午後行くなら、朝の方は無理に行かなくてもいいんじゃない?」 と言ってくれました。 でも、なぜだかわからないけど、私はどうしてもそこへ行かなければいけない気がしていました。 (お世話になった先生方に、きちんと感謝の気持ちを行動で示さなきゃ。 けじめだもんね) そんな風に行かなければいけない理由を考えながら、最後に心に誓ったことは、 「サキの母親として、堂々と胸を張っていること」 「泣かないこと(私は”可哀想なお母さん”じゃないんだ)」 でした。 それなのに… それなのに… 受付の先生の中に、1年生のときの担任の先生の顔を見つけて、すぐにウルウル…。 最初の卒業生の入場では号泣!!! だって、みんな立派に成長しているんです。 その後も卒業証書授与を見たり、歌を聞いたりするたびに、涙、涙。 (そもそも、この私が”泣かない”なんていう設定に無理があったようです。笑) 卒業証書授与のとき、サキの名前が読み上げられ、数秒間の静けさのあと次の子の名前が呼ばれたときだけは、さすがに胸がチクリとしました。 でも、会場で私をすぐに見つけ、隣の席に呼んでくれたサキの親友Yちゃんのお母さんがいろいろ話しかけてくれたおかげで、一人で落ち込むことはありませんでした。 (ありがとうございました) 緊張してガチガチだったり、嬉しそうにニコニコ笑っていたり、一人ひとりみんな表情は違っていたけれど、どの子もキラキラした瞳で、しっかりと胸を張って立ち、本当に立派でした。 それを見ながら、私はようやく自分が卒業式に参加した意味がわかったような気がしました。 これは、私のための卒業式だったんだ。 我が子のことは、いつまでも頼りなく見えるものです。 でも、こうして我が子と同じ年齢の子どもたちがしっかりと成長している姿を見ることで、 (サキも、一歩外から見ると、もうこんな風に見えるのかもしれないな) と、思えたのです。 もしかしたら私が思うよりずっと、サキは成長しているのかもしれない。 それを客観的に見せてもらえたようで、私は自分がひとつの段階を卒業できたような気がしました。 帰り道、冷たい風に吹かれながら、私はコートは手に持って、堂々と胸を張って歩きました。 午後2時50分。 サキと一緒に再び小学校へ行ったとき、正門の前でビデオ撮影をしている一人の男性。 「あれ? セトハル君!?」 学校の中には、花束を持って立っているセトママさんが… 「サキちゃん、卒業おめでとう」 CGクリエイターの瀬戸晴生さん(セトハル君)と、お母さんのセトママさんが、卒業式に駆けつけてくれたのです。前日、ほとんど徹夜で『メロンパンの一日』の仕上げ作業をしていた、と聞いていた2人。瀬戸家の人たちといると、サプライズだらけです。 「だって~、2人だけで卒業式に行くなんて聞いちゃったら、ほっとけないでしょ?」 「ありがとうございます」 校長室では、校長先生と担任の先生以外にも、教頭先生、教務主任の先生、そして1年生から5年生までにサキを受け持ってくださった先生方が集まって下さっていました。 校長先生から卒業証書を渡され、照れくさそうに微笑むサキ。 これまでお世話になった先生方が記念品をサキに渡しながら、握手。 校長先生は、朝の卒業式でされたお話を、再びサキにしてくださいました。 「今日はね、みんなに2つのことを伝えました。 一つは”人権”について。 みんな自由に生きる権利がある、ということ。 もちろん自分にもあるし、自分の周りにいるすべての人にも、その権利があるんだよ。 それを尊重しあうことが大切だね。 もう一つは”平等”について。 一人ひとり、みんな顔や個性は違っているけど、それでいいんだ。 大切なのは、みんな平等だということ。 それぞれの違いをお互いに認め合うことが大切なんだ」 それはまるで「学校」という枠からはみ出してしまったサキの自由を尊重し、その個性を認めているよ、と言ってくださっているようでした。 「おかーさん、そんなとこで一人で泣いてちゃダメじゃない! ほら、一言感想を言ってよ~」 と、校長先生。 (えっ?いきなりそんな…) 何か言わなくちゃ!と思うのですが、こんなに温かいたくさんの人たちに囲まれてしまったら、もう「ありがとうございます」と言うだけで精一杯。あとは涙が止まりませんでした。 続いて校長先生が、セトハル君、セトママに 「この子の才能を見出してくださって、本当にありがとうございます。 これからも、どうぞ応援してやってください」 と、父が生きていたら言ってくれただろうな、と思うような挨拶をしてくださり、セトママは、 「サキちゃんは、本当に素晴らしい才能を持っています。 その上、ものすごい吸収力もありますから、きっとコンピューターに関してもあっという間にマスターしてしまうでしょう。 私たちの方こそ、この出会いに感謝しています」 と、もったいないようなお言葉。 …こうしてサキは無事、小学校を卒業することができました。 私たちが出会えたのがこの小学校で、本当に良かった♪ 校庭で、サキは謝恩会の片付けなどで残っていたお友だちに会いました。 「サキ~~! 大きくなったね♪」 親友のYちゃんもいます。 みんなと一緒に笑顔で語り合うサキ。 最後に、記念撮影です☆ みんなとは会わないはずの時間だったので、まさかこんな写真が撮れるなんて… 良かったね♪ みんな、ありがとう! セトママが私のそばに寄ってきて、 「ひなたさん、サキちゃんは自由にのびのびと生きているんだもん、心配ないわよ。 それだけの環境をつくってきたお母さんが一番大変だったことは、私もわかっているつもり。 よく頑張ったね~!」 最後にサキの今日の感想。 「校旗に感動したぁ」 「は?あの、学校の旗?」 「そう。あの旗、低学年のときから、舞台の上にときどき立っているのを見て、憧れていたんだよ。 ”いつかあれを触ってみたい!”って思ってたけど、今日やっとその夢が叶ったからね。 ”そっか~、卒業する頃に触れるようになるんだ!”って思ったよ~」 親としては「(一番の感動が)そこかい?」と突っ込みたくもなりますが、なるほどサキの自由な感性はすくすく育っているようです(笑)。 サキ、卒業おめでとう そして、サキの卒業を祝ってくださるすべてのみなさんに、心から「ありがとうございます」 今夜、秋葉原で1回目のプレゼンテーションがあります。 どうなることやら?ドキドキしています(^^; そして明日から、いよいよ東京国際アニメフェアの開催です♪ (22(木)・23(金)はビジネスデー。一般デーは24(土)・25(日)です) 『メロンパンの一日』は、感動的なラストに仕上がりました☆ さすがは「将来は映画を撮ってみたい」と言うセトハル君。 感性も技術も、素晴らしいです。 アニメフェアのあと、みなさんにも楽しんでいただけるよう、フリーで公開する予定です。 セトハル君のおかげで、一人でも多くのみなさんに見ていただきたい!と心から思える作品が誕生しました。 どうぞ、お楽しみに…。 ひなたまさみ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[サキのあゆみ] カテゴリの最新記事
|