ひなたまさみとひなたぼっこ

おはようございます
前回の日記からのつづきです。

ある朝突然、引きこもり宣言をした娘サキ（中２）。

「毎日、同じところ行ってさ、

同じ人たちと会ってさ、

同じような授業受けてさ…

人間関係も面倒くさいし、

勉強もだるいし、

もう全部がイヤになった」

はぁ？この娘、何言ってるんだろ？

そうだよ、毎日同じことを繰り返してみんな生きてるんだよ。

面倒臭いことばっかりやってるんだよ。

大人の社会じゃ、それは当たり前のことなんだよ

カチンときてしまった私は思わず、

「ああ、子どもはいいよね～～

そうやっていつでも逃げればいいんだから」

と言ってしまいました。

（こういうところが、ほんとにダメなんですね…）

サキは自分で、

「100歩進んで99歩下がる生き方をしている」

と言ったことがありましたが、本当にそうだと思うことがあります。

そばで見ている親にとっては、

（どうして100歩も頑張って進んだ人が、

いきなり99歩も下がってしまうのよ？）

と、信じられない気持ちになります。

99歩ならいいけれど、きれいに100歩戻ることも…

せっかくコツコツ、コツコツ積み上げたものでも、

もう、どーーーーでもいいや

と思った瞬間、それはすべてをリセットしてしまうほどの破壊力を持つわけです

気持ちはわからなくはないです。
進んで戻った99歩の中に、サキの心の栄養になる要素も、きっと含まれているでしょう。
でもね、親としては

（せめて50歩下がるくらいにしておけば？）

と思ってしまうんです。

またこれか…

その日、サキは学校を休みました。

担任の先生には、私から

「サキが切れました。

もう学校へは行かず、引きこもるそうです」

とメールで報告。

ゆっくり話をした方が良さそうだ、とその日午後から仕事を早退させてもらい、家に帰る途中、同級生のＭちゃんのお母さんにバッタリ

Ｍちゃんのお母さんのお友だちから、

Ｍちゃんが引きこもっていて、小６の途中から不登校

今も中学校へは通わず、家からほとんど出ていない

と少し前に知らされたばかりで、気になっていたところでした。

娘の通っていた小学校では、それほど不登校児がいるわけではありません。
娘が在籍していた頃も、

不登校児＝サキちゃん

というくらい、サキの不登校が目立っていました。

子どもが不登校になると、ほとんどの親は辛いと思います。
あの日々のことを思い出すと、とても他人事とは思えませんでした。

Ｍちゃんのことも心配ですが、私としてはお母さんの方が心配でした。

「Ｍちゃんのお母さん、ですよね？」

私の方から、思わず声をかけてしまいました。
しばらく話をして、Ｍちゃんは、

ある病気がきっかけで、引っ込み思案になったこと、

人前に出ることを極端に嫌うようになったこと、

少年漫画が好きでジャンプを買っていること、

近所のコンビニにたまに行くくらいで、ほとんど外出していないこと

などがわかりました。

お母さんが出かけようとすると、いろいろ言って邪魔をすることも、

気持ちが不安定で、スイッチが入ると手がつけられないほどになることも、

全部以前の娘とよく重なりました。

「きっと不安で、寂しくて、お母さんにいっぱい甘えたいんですね」

当時はよくわからなかったことが、今では理解できるような気がします。

「本当は、もっと前から、何度かひなたさんに相談しようと思っていました」

「そうだったんですか…

お母さん、辛いですね。

私もね、出口の見えない真っ暗なトンネルに入ってしまったようで、途方に暮れていた時期があったから。

Ｍちゃんのために、私たち親子で出来ることがあるといいんだけどね。

これから家に帰って、ちょっと娘に相談してみます。

あっ、うちの娘も、

また引きこもる

とか言って、今朝は学校休みましたけどね」

家に帰ると、

「あっ、おかえり」

とリビングのパソコンの前で迎えてくれた娘。

「あれ、どうしたの？」

（って、あなたのことが心配で帰ってきたんじゃないのよ～～！）

とりあえず部屋に引きこもっていないので一安心。

私は早速Ｍちゃんの話をサキにしました。

「Ｍちゃん、少年漫画が好きなんだ

じゃ、銀魂も好きかな？

何とかして、外に出られるようにしてあげたいね。

サキの行ってる支援級に来ればいいのに。

みんな優しいよ。

駅も一緒だし、朝待ち合わせして一緒に行くこともできるよね♪」

「そうだよね～。

でも、今のＭちゃんの様子を見ているお母さんには、

そんな日がくるとはとても思えないみたいだよ」

「わかるよ。

サキはね、たぶんＭちゃんの気持ちがわかると思う。

いろんなことが全部、怖くなっちゃうんだよね。

電話のベルも、玄関のチャイムの音も、いちいちビクッとするし、

外に出ると、人の目が怖いんだよ。

だからね、部屋から出られなくなる」

「携帯は持ってるみたいだけどね、

メールが来ても返信しないし、電話が来ても出ないんだって」

「わかった

ママ、サキ手紙を書いてみるよ

手紙だったら、気が向いたときに読めるでしょ？」

サキは机に向かうと、すぐに手紙を書き始めました。

「こんにちは！

ひなたさきです。

覚えてますか？

元引きこもりデス」

…こんな感じの手紙でした。

（元って？？？

また戻る気じゃなかったっけ？笑）

自分の好きな漫画やアニメをさらっと紹介して、

今度いっしょに遊びたいな

って、自分の携帯のメールアドレスを添えて…

何でも相談してね！

たぶんＭちゃんの気持ちすーごくわかる

Ｍちゃんの家に投函しました。
読んでもらえるといいな

Ｍちゃんの心に響くといいな

「でさ、

もう学校行かない

って言ってたけど、Ｍちゃんが行くときは一緒について行くの？」

「は？

何言ってんの？

学校は行くでしょ。

もうすぐテストだしね」

「えっ？

だって朝…」

「ああ、あれは言っただけ。

学校へは行くよ。

高校行きたいしね。

面倒臭いけど、続けてれば慣れてくるかな？とも思うし…」

そして翌日から、またサキは学校へ通い始めました。
まぁ、ちょっとずつ遅刻しているし、テスト勉強への意欲もだいぶなくなっていますけどね。

「遅れてもいいから、毎日来てごらん」

と言ってくださる先生のおかげです。

今回は、99歩も下がることなく、60歩くらいの後退だったように思います。
Ｍちゃんのドサクサがあったことも大きかったですね。
（あれがなければ、一週間くらいは休んだと思います）

私は正直、ホッとしました。

でもその一方で、

サキの感覚は正しいのかもね

とも思っています。

みんな毎日同じことを繰り返して生きているけど、

私もずっとそれが当たり前だと思ってきたけど、

本当にこの生き方しかないんだっけ？

もちろん、細かいところは毎日違っているわけで、新鮮な発見も出会いもいくらでもできるはずだけど…

社会に出る

自立する

って、この道しかないんだっけ？

もっと他に道はないんだっけ？

この毎日の繰り返しが窮屈に感じたり、嫌いだと思ったりする人がいてもおかしくないよね。

そんなことを、ふと考えてしまうのでした。

Ｍちゃん、そしてＭちゃんのお母さんにとっては、
こんな私たち親子でも、先輩なんだなぁ～～

サキは

引きこもるより、出た方がやっぱりいい

と思っているんだなぁ

私とサキが、ちっとはＭちゃん親子の役に立てるといいなぁ

ひなたまさみ