ベンチャーか野球か!?
オリックスと近鉄バッファローズが「合併」すると騒がしい。騒いでいるのは野球ファンだけだと思うが、テレビをみているとかならずニュースに野球枠があるぐらいだから日本国民は野球に興味を抱く義務があるものらしい。しかし、自分のように既成の秩序へいかにかして斬りこむというかまえで駆け抜けてきたベンチャー事業経験者にすれば凡そわれわれの社会の中の、しかもいつでも「安泰」印のものになど、はなから興味がわかない。半ズボンのむかしから野球は興味の外であった。見事な非国民である。よく考えてみて欲しい。日本のプロ野球なるものにはぜったいに含まれていないものがある。無い、無い、はなから無いというもの。それが自由競争原理ではないか。あの元日本共産党東大細胞の最高指導者のひとりであった、現読売巨人軍の渡辺オーナーがなにかといえば「自由競争」などとシャアシャアといってのけるその自由競争が一度も目撃できなかった。だから自分はプロ野球が嫌いなのだ。みなさんは、私よりも遥かに野球にお詳しい。それならば、なぜこのようなものに疑問を抱かないのかをご質問したい。「日本プロフェッショナル野球協約」【第28条(株主構成の届出と日本人以外の特殊)】『この組織に所属する球団は、毎年4月1日までに、その年の2月1日現在の自球団の発行済み株式数、および株主すべての名称、住所、株式保有の割合をコミッショナーに届けなければならない。 この協約により要求される発行済み資本の内、日本に国籍を有しないものの持株総計は資本総額の49パーセントを超えてはならない。』【第36条の5(新参加球団に対する加盟料)】 『新たにこの組織の参加資格を取得した球団は、参加する連盟選手権年度の1月末日までに加盟料を支払うものとする。支払方法については実行委員会の議決により延納あるいは、分割による支払いも可能とする。 新参加球団の加盟料の金額は60億円とし、日本野球機構および同機構に既に属している全球団に分配され、各球団への分配金額は均等とする。』【第36条の6(既存球団の譲り受けまたは実際の球団保有者変更にともなう参加料)】 『この組織に加盟している球団の株式の過半数を有する株主、または過半数に達していなくても事実上支配権を有するとみなされる株主から経営権を譲り受けた法人あるいは個人は、参加する連盟選手権年度の1月末日までに加盟料を支払うものとする。支払方法については実行委員会の議決により延納あるいは、分割による支払いも可能とする。 その参加料の金額は30億円とし、日本野球機構および同機構に既に属している全球団に分配され、各球団への分配金額は均等とする。』日本のプロ野球というものは、所有資産として関与ができオーナー会議に参加するには、その新規参入に場代として60億円払わなければならず(プレーヤー交代でも30億円払わなければならないと聞く)当然のように外国資本の参入は制限されていて、なおかつオーナー会議の決定事項は、12人のオーナーのうちの9人以上出席、出席者全員の4分の3以上の同意が必要(第22条の2)と厳格である。したがって、日本プロ野球のオーナー会議というのは、大旦那さまだけがご参加になる極めて資格を限定・審査されている、超絶的な貴賓富貴層の頂上会議的な色彩が濃厚であって、そのような人士のみが参加できる会員限定制のクラブであある。参入どころか、オーナーシップを保有している会社が球団の解散を決めるか、あるいはその会社自身が倒産でもしない限り、その頂上会議から抜けることすらできない状況になっているとか。『職業野球団に対して支出した広告宣伝費等の取り扱いについて』国税庁通達(昭和29年)(クリックでジャンプします)およそプロ野球球団においては、いかなる赤字を生じようとも、その赤字についてはオーナーシップを持つ親会社の広告宣伝費として認められるので、球団の自助努力なしに、親会社の状況次第では、際限なく球団に資金をつぎ込むことが可能となった。企業会計や財務を経験したことがある方は、すぐに理解できると思うが日本のプロ野球経営とは「事実上日本の国民の税金を勝手に利用して運営されている一種の利権」ではないのか。予想できることは、所有する球団のオーナー企業の状況に応じて、球団の資金の格差はみごとに発生するはずだ。差別的なほどの差がつくということになってしまう。当然ながらその所有と経営は鉄壁の結合である。地球上でこれほどの巨大な組織群を所有して好きにできたというような存在は、もしかしたらソビエト連邦時代のスターリンぐらいのものかもしれない。 『オリックスの球団経営について言えば、オリックス本体の広告宣伝費ですよ、と言ってしまえば、あと10年ぐらいは務まる。赤字額の大きさが問題なのではなく、投資に見合うだけのメリットが得られ、会社全体にバックアップしてもらっているという確信があれば、お金を使うのは一向にかまわない。100億円、200億円規模を広告宣伝に使っている会社はいっぱいある』オリックス株式会社の宮内義彦オーナー6月15日付日本経済新聞朝刊第3面おやおや、日本の政府や経済産業省産業政策局はなぜ新規創業と研究開発型ベンチャー事業者に対して支援施策としてこのようなみごとな「プロ野球球団維持支援方式」を導入しなかったのだろうか。オリックスや、日本生命、電通、三井物産らがベンチャーキャピタルのファンド組合員として私の事業プランに投じた資金は最大の日本生命でも15万円で以下10万円以下だったはず。これは東大工学部出身でスタンフォード大学院卒の担当キャピタリストから直接聞いた。日本のベンチャー事業者は経済同友会直系のファンド組合出資を受けてもその程度の支出で恩恵を与えたと言われ続けているのだ。プロ野球のどこに市場規模の急成長期待と、経済社会全般についての公益性があるというのだろうか。それも全額損金の広告宣伝費として支出が可能というプロ野球経営の恩典の手厚さを思えば、日本ではベンチャー事業者などはよほど「賤業扱い」を受けているとせねばならない。この事を今あらためて理解できた。それでは日本のプロ野球が21世紀を牽引し推進する次世代活性の中核たりえるのか、と。そのように私などは問いたい思いがある。およそ言葉の実態としての自由競争を完膚なきまでに否定しているこの見事な歪みを内部に潜めておきながら、、、ようするに中央官庁の「気随きまま」「好き勝手裁量行政」のあだ花。それも数多くあるなかの、ひとつに過ぎない。いうまでもない、日本の新規創業支援施策とプロ野球球団運営のすがたのその落差にみられる現実。教えてくれるものはその程度のものだ。