萌えていられるような事態ではないそうで
年収が4000万円以上もあると言われている森永卓郎氏が、わずか1400万円の住宅ローンとは、恐れ入った話だが、金利上昇で月額負担額が、年間3万円増えただけでもこれだけ危機感を抱いている理由は、今後の再利上げの規模と時期を憂慮してのものだろう。それでなくても、面白くない世相になってきている。まだまだまともな行財政改革は遅々として進まず、むしろ一切手をつけづ足踏みしている感があるにもかかわらず、生活者負担だけは確実に増えてゆく。そこにローン返済額の増加で年々逼迫感は過酷になってゆく。生活の品質は、ますますさがりっぱなしで負担増の重圧感はとめどない。社会不安はつのる一方で、治安はかくして最悪になってゆくのもむべなるかな。わたしの場合、昔の金利のままであれば、11月返済分の利息相当額は2万8325円だった。ところが、金利の引き上げを受けて、それが3万1307円に増えていた。 つまり、1カ月当たりの利息負担が2982円増えたことになる。逆に言うと、元本返済分が2982円減ったというわけだ。 ということは、元本の減り方が遅くなったということである。そして、元本の減り方が遅くなれば、それだけ住宅ローン返済のペースが遅れることになる。同時に、その元本に対する金利負担も増えるのは必然の結果である。 もっとも、当分の間は、それがどれほど大変ことなのか、実感することはないだろう。返済額が変わらないからだ。だが、返済額見直しの時期に、そのしわ寄せがやってくる。金利引き上げと元本の返済ペース低下による影響で、返済額が一気に増加するのである。 今回は、金利が 0.25 %の引き上げという結果になった。だが、これで利上げが打ち止めになるという保証はどこにもない。それどころか、マーケットには日銀が近々金利の再引き上げに踏み切るのではないか見ている人も少なくないのだ。 森永 卓郎(もりなが・たくろう)氏/経済アナリスト12月4日公開 第60回ある日突然やってくる住宅ローン金利上昇のしわ寄せ 経済アナリスト、獨協大学教授1957年7月12日生まれ。東京都出身。東京大学経済学部卒業(‘80年)。日本専売公社、日本経済研究センター、 経済企画庁総合計画局等を経て、91年から(株)三和総合研究所(現:三菱UFJリサーチ&コンサルティング)にて主席研究員、 現在は客員研究員。獨協大学教授。 事実、10月13日の記者会見で日銀の福井総裁は、「景気指標が悪化していてもそれは一時的なものである」として、「年内の追加利上げの可能性を問われれば否定できない」とまで述べている。 たとえ年内の利上げがなかったとしても、「利上げを継続していく」という発言から見ると、遅かれ早かれ再利上げはあるようだ。 わたしが抱えている1400万円の住宅ローンでさえ、0.25 %の金利引き上げで利息負担額が年間3万円増になった。これで、あと1%上昇したら年間で12万円以上の負担増になる。月額1万円増だ。半端な数字ではないことがお分かりだろう。 しかも、金利の1%アップなど、日銀がその気になればすぐにできることだ。何千万円ものローンを抱えている人は死活問題である。 森永 卓郎(もりなが・たくろう)氏/経済アナリスト12月4日公開 第60回ある日突然やってくる住宅ローン金利上昇のしわ寄せ