2010年を俯瞰して
歴史にイフはないのだけれど、戦後日本が、吉田茂の選んだ「軽武装、経済重視」路線ではなく、鳩山一郎の「再軍備、自主独立」路線を歩んでいたら、ということを時々、考えます。占領軍によって、公職追放されなかったら、吉田が総理になる目はなく、鳩山が長期政権を敷いていた可能性が高い。 この話、たぶん、読者は少ないでしょうが(苦笑)、ちょっと続けます。平和憲法のもと、経済的な繁栄を謳歌した吉田ドクトリンを批判する向きは、左右を問わず、ほとんど日本にはいない。冷戦終結までネットで得をした、というのはその通り、そもそもこの道以外の想定は今の日本人には難しい。 ただ、吉田ドクトリンによって、ネットで儲かったといっても、設備投資を欠いて、その分、人件費に充ててきた企業のようなもので、従業員(国民)は、豊かになったけれど、安全保障のためのインフラ投資は欠いてきた。冷戦が終わってから、さて、自前でやるか、米国依存でやるか、迷走してきた。 自前でやるとなると、莫大なコストがかかる。さらにハードの問題以上に、ソフトの問題が大きい。軍事力を持つということは、軍部を統治するということ。暴力装置を身の内に抱えながら、その抑制も含めて統治できなければ、独立国とはいえない。ところが、そのガバナンスのノウハウも自信もない。 そうしてみてくると、誰がこの国をガバナンスしてきたのか、はっきりしてくる。主権の一部(一部と言っても、生命線にかかわる主要部分ですが)を米国に委譲している状況で、米国に「統治されていない」とか、「完全に独立している」などと言っても、虚しく響くだけ。 でも、米国自身は、日本の内政に関与している素振りは見せず、決して自らの手は汚さないけれど、占領時代に、特捜部という置き土産を残していくことを忘れなかった。「日米同盟の正体」の著者・孫崎氏によると、日本のキャリア官僚の中で、米国駐在経験者が出世する割合は法務省が圧倒的に高い。 現特捜部長の佐久間氏も、外務省に出向し、駐米大使館での勤務経験があります。米国組であることが、法務官僚のエリートコースの重要な条件なのです。他省庁も、米国に留学させたり、勤務させたりするが、法務省のキャリア官僚ほどには、省内の出世との結びつきとの関係は高くない。 孫崎氏いわく、「法務官僚にとって、外務省に出向するとか、大使館勤務になるという自体が重要ではない。米国に滞在している時間が大事。その期間に、この国の権力にかかわる機微を学ぶ」のだそうです。特捜部は、定期的にこの国の統治権力者の首をはねる。米国は決して自らの手は汚さない。 今、起きている事態が、すべて米国にそそのかされてのこととは言えない。また、そんな証拠は簡単に手に入るものではない。ただ、特捜部が、米国によって埋め込まれた、戦後日本の、米国による統治構造に起源をもつものであり、「王殺し」がビルトインされたシステムであることはたしか。 だいたい、普通の独立国で、たかが検察官僚が、「現役の間に、バッジ(国会議員)をあげるのが目標」なんてことを、堂々と公言する国が、あるだろうか? まるで、マン・ハンティングではないか。ずっと疑問に思ってきた。特捜部がこの国の最高権力である理由 日本が独立国であるためのインフラ、特にソフトを欠いているというのは、そういうことも含まれる。政治権力に対する司法権力による監視や牽制が必要なのは、言うまでもないが、その権力行使が制度化・定期化しているなどというのは、異常ではないか。検察は、本来の司法機関として適正化されるべきだ。 【引用】http://www.iwakamiyasumi.com/ いわかみ・やすみ ジャーナリスト大学卒業後、出版社(情報センター出版局)に就職して編集者となる。退職後、週刊誌記者を経て、1987年フリージャーナリストとなる。1989年から94年まで6年間かけて、旧ソ連・東欧圏を取材し続け、1996年にソ連の崩壊とロシアの民主化の実装を描いた『あらかじめ裏切られた革命』(講談社)を出版。同年、第18回講談社ノンフィクション賞を受賞する。2000年10月からフジテレビ系『とくダネ!』のレギュラーコメンテーターTwitterに立て篭もって久しい。システムとして、沢山疑念を抱くものの情報のフローから学び取れるものが少なくはない。危惧するものは多いが、この危機感の募る状況にあってせめて個人のささやかな意思表明をするにはブログではすでにTwitterの指し示した状況に追いつけないのかもしれないのだ。こちらのブログでは、一日数百人。最近のように放置しっぱなしであればせいぜい100人の訪問だろう。また一部は、Twitterに引越しされている向きもあるだろう。ということで、不本意ながらTwitterで連日つぶやきを多産している。不思議なもので、すぐれて日本の「今」の旬な話題も受容することが可能となる事もある。今日は、そんな中でも極めて高い要約度のある岩上安身氏のある日の論述をまとめて引用させて貰った。氏の述べるところは、自分がこのブログで過去数年間一貫して述べてきたことの要約に近い。現状認識として、著しく秀逸だと思われるので各位参考にしていただきたい。凡庸な私が、だらだらと述べて来たことが秀才の極めて高い集約度で現在我々日本人を取り囲む時代状況を描きだされていると思う次第だ。