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カテゴリ:きょうびの民主主義
農民Aさんは、つばの広い麦藁帽をちょっと上げて空を仰いでいる。
ようやく梅雨が明けたようだ。長引いた梅雨のせいで、畑のトマトはひび割れた。 でもまあ、形は悪いけれど味は、まずまず。比較的湿度の少ない爽やかなここ数日です。 その日は町の農業委員会から呼出しがあって、息子とともにでかけてきた。 Aさんの農地に隣接する田圃がX建設会社の土建資材置き場になって十数年が経つのだが、 転用許可がされていないという。 国の農業政策から、農地は自由に売買流通できない仕組みになっている。 まず農地を売買するには管轄の農業委員会へ許可をもらわねばならないのだ。 日本は資本主義社会であるから、所有権は自由に譲渡できるのが原則なのだけれど、 事、国民の食料を生産する農地に関しては、勝手気ままな売買や転用を農業委員会という市町村の機関に事前審議させることになる。 ところが、Aさんの農地に隣接する農地所有者X氏は、その農地転用許可を取らずに転用してしまったのだ。つまり、もともと「農業をしたいので、農地を買います。だから売買の許可をください。」と、農業委員会へ申し出て許可をうけた農地だったのだが、取得すると、まもなく本業である土建業の資材置き場と事務所や倉庫用地に転用してしまった。 これは、レッキとした農地法違反事件。「違反転用」といい、刑事罰も科される犯罪行為。 さて、農業委員会はX氏の行為をどう考えるのか? 農地・農業・農民を守るべき農地法と農業委員会が、長年「違反転用」を放置してきた責任は重い。 Aさんは、農業委員会のやってきたことに大いに疑問があるし、だいいち違反転用によってAさんの農地に様々な悪影響が出ているのだ。Aさんがこんな迷惑な行為の是正を求めて足かけ5年になる。 この日、ようやく農業委員会からヒアリングの日が設定され、意見を述べることができたのだが・・・。 町の農業委員会会長は言う。 違反転用は事実でありX氏が悪い。しかし、違反だということを正式に会議に諮るとなると大きな影響が出るので避けたい。X氏は土建会社を営むと同時に、町議会議員でもある。事が表沙汰になると、議員辞職に追いやることになるやもしれぬ。さらに、建設業の指名停止になる可能性もある。だから「穏便に」解決したい。・・・と。さらに、同じ町の中で争いはイケナイ。X氏も悪いがAさんも悪いなどと世間の非難を浴びることになるぞ。・・・とも。。。 いや、ちょっと待て。転用前の話し合いであれば、Aさん対X氏の民間のイザコザだと片づけることは可能かもしれないが、もはや違反転用してしまった後は、X氏と行政(農業委員会)の問題ではないか?民民の問題に矮小化することによってAさんの主張を抑えることが出来たならば、不法行為者であるX氏を免責すると同時に、過去の行政の不備を隠蔽することも出来る。農民を泣かせておけば、違法行為者のXも行政機関も、誰一人責任を取らされることなく「穏便に」解決できると言っているのではないのか? なんじゃこりゃ!! 日本国憲法には、「法の下の平等」という大原則があり、人種・性別・社会的身分などによって差別されることなく、法治国家の法の下では平等である。総理大臣だって犯罪を犯せば捕まるのが当たり前。ところが、町議会議員であるX氏の犯罪行為は表沙汰にしないで処理しようという考え方には納得いかないと、Aさんは思う。裁判所でもない農業委員会という行政機関が、違法行為に対して、そんな対処をしていいのか?とも思う。 法治国家の行政機関は、法の支配の下に粛々と行政を行うのが本旨であって、議会議員の職がアブナイなどという理由で、問題をうやむやにしてよいものだろうか。 議会議員の立場を重んじ、農民の立場を軽んじるのか?農民の人権より、議員の人権のほうが重いのか?と、Aさんは首を傾げてしまう。 寝苦しい熱帯夜。しばらく、寝付きの悪い日々がつづきそうなAさんです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006/08/01 12:27:48 PM
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