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カテゴリ:★★★☆☆な本
俺は私立探偵。ちょっとした特技のため、この業界では有名人だ。その秘密は追々分かってくるだろうが、「音」に関することだ、とだけ言っておこう。今はある産業スパイについての仕事をしている。地味だが報酬が破格なのだ。楽勝な仕事だったはずが―。気付けば俺は、とんでもない現場を「目撃」してしまっていた。 <感想> ★★★☆☆ なんやかんやで道尾作品三作目です。 正直って、こういうのが今は売れるんだなぁ~程度の印象ですが、 ブック○フの100円コーナーにあるとついつい買っちゃうんですよ ね・・・。ちょっとクセになっているのかもしれません。 さて、本書の主人公は人並みはずれた聴力を持つ私立探偵です。 あちこちで書評を読むとライト(軽めの)ハードバイルドと書かれて いますが、ハードボイルドの基本はしっかり押さえた書き方をされ ているかなぁ~と思います。 これを「硬」とするなら、主人公の周囲のキャラは「軟」。 読み始め はこの「硬」「軟」に戸惑いますが、文章のテンポで読者は引きづられ ていきます。 後半になると「軟」の部分も深いのではないか?という エピソードがいくつか出てきて、この手の作品がしばしば陥る中途ハ ンパ感や破綻は微塵も感じさせません。 基本的にテーマがしっかり しているせいだと思いますが、この点に於いて道尾秀介さんは巧み です。 ちょいと辛口になりますが、作家としての力量を十分備えている道尾 秀介さんが直木賞受賞にいたらないのは、昨今ブームのレトリック (読者騙し)にあるような気がしてなりません。 読者が何を望んでい るのか?を意識するのは作家としてあるべき姿だし、このスタイルで 売り上げを伸ばしたいという出版社サイドの思惑もあると思います。 ただ、あまりにもそれにがんじがらめになってしまうのはいかがなも のでしょうか? 伊坂幸太郎さんの例を引くまでもなく、直木賞が作家としての頂点な どと申し上げるつもりはありません。 しかし、作品を読むたびにこ の作家の真剣勝負を見てみたいと思っている小説読みは私だけで はないはずです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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