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カテゴリ:★★★★★な本
一家惨殺事件のただひとりの生き残りとして、新たな人生を歩み始めた十歳の少女。だが、彼女の人生は、いつしか狂い始めた。人生は、薔薇色のお菓子のよう…。またひとり、彼女は人を殺す。何が少女を伝説の殺人鬼・フジコにしてしまったのか?あとがきに至るまで、精緻に組み立てられた謎のタペストリ。 <感想> ★★★★★ 真梨幸子さんは昨年出た『更年期少女』が注目されています。 個人的 にはまったくノーマークの作家さんでしたが、真梨幸子さんはスゴい人か もしれません。 さて、本書は一家惨殺の犠牲者となった少女が成長して殺人鬼になるま でを描いているエグい話です。 私の中でエグい小説といえば、東電OL 殺人事件をモチーフにした桐野夏生さんの『グロテスク』と音羽少女殺人 事件をモチーフにした角田光代さんの『森に眠る魚』が双璧をなしていま すが、本書はそれに勝るとも劣らない作品です。 感動とか癒しなどとは まったく無縁ですが、とにかく描ききるという点において秀逸な作品です。 読書メーターのレビューを拝見すると、湊かなえさんと比較している方が 多く見受けられますが、筆力では湊さんを圧倒しています。 ミステリー としての仕掛けはかなり複雑で私自身まだ誤読しているのではないかと 思っています。 ただ、それはあくまでオマケのようなもので、単純に読む だけでも真梨幸子という作家の実力は十分に感じ取れます。 作品のなかでフランス・ギャルの"Poup?e de cire, poup?e de son"が引用 されています。 最近CMでも使われていたし、日本では『夢見るシャンソン人形』という邦 題で幾度もカヴァされているのでご存知の方も多いと思います。 作詞・ 作曲のセルジュ・ゲンスブールは(以下ネタばれ反転→)ダブルミーニ ングを駆使して皮肉な歌詞に仕上げていますが、唄っているフランス・ ギャルは当時それにまったく気がついていなかったと言われています。 そんなエピソードを作品に取り込んでしまうあたりも見事です。 しかし、18才の女の子を騙すようなことをするセルジュ・ゲンスブールっ て相当イヤなオッサンですね。 この曲は70年代ポップスだと思ってい ましたが、私の生まれる前に流行った曲だと知ってぶっくり!ちなみに フランス・ギャルは現在64歳です。 閑話休題。 とにかく、エネルギーを吸い取られるような内容なので時節柄おススメは しませんが、ガツンとくる作品をお読みになりたい方はご自分の体調と相 談してお読みになってみて下さいませ! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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