カテゴリ:books
電車の行き帰りが読書タイムだったが、送信所イベントに合わせて、小説を書いたり、イベント用にブログの文章を書いていた。しばらく先もこんな感じだろう。
ちょっと活字に飢えていた。で、稲見一良さんの「花見川のハック」。ブログ仲間の慧俊さんに紹介された小説である。 残念ながら絶版。稲見さんは大阪出身でドキュメンタリーの監督などを経て、その傍ら、作家活動。千葉市花見川区を舞台(実名でないときもあるが、モデルであることは確か)に多くの短編小説を中心に書き、94年2月にガンの闘病の末、亡くなった。 僕はその名前すら知らなかったのだけど、ネット検索すると、「もっと知られてもいい作家」とみなさんが書いている。その通りだと思う。死後10年過ぎただけで、絶版がいくつもあるのは寂しい。そんな風に思ったのは僕だけじゃないようで、光文社文庫からは復刊もされている。 稲見さんの小説を単純に言えば、ハードボイルド・ファンタジー。銃、狩猟、焚火といった男くさい世界の中に、メローな世界が溶け込んでいて、読後感がいい。 最大の特徴は劇中に度々出てくる「鳥」に象徴される飛翔、飛躍だと思う。物語はハードボイルドで始まるが、最後は必ずといっていいほど飛翔する。文字通り、大空に飛び立つこともあれば、話のタッチがファンタジーに変わることもある。これは宮崎駿にも通じる世界だと思う。 それはガンに侵された男の願望でもあったのだろう。自由でありたい。そう思ったに違いない。あるいは、この世との惜別の思いのような気がする。 「花見川のハック」は晩年の作品で正直、その質を問えば、玉石混合かもしれない。しかし、そこには苦しみながらも生きようとした男の軌跡が描かれている。 父親として、ご子息に何かを残こそうとした意思がはっきり見える。すごく私的な物語、遺言集なんだろう。たが、ひとつの小説として成立しているのは、稲見さんの作家としての力量である。父としての思いには普遍性がある。 父と息子の関係を描く「煙」という短編のラストで、稲見さんはこう書く。 パパはそれから十年生きた。再発を繰返して、三度腹と胸を切った。パパは衰弱しきった顔でぼくを見詰めながら、 「ああおもしろかった」 と一言言って死んだ。 パパとは闘病する自分自身の姿である。これが死を覚悟して書いた晩年の作品だ。陳腐な言葉だが、すごいなと思う。こうはなかなか書けない。 稲見さんにとって、人生とはハードボイルドであり、夢のようなファンタジーだったのではないか。つまり、小説世界そのものが稲見さんなのだ。 僕のブログ読者は花見川区の方も多いので、最後に表題に触れたい。 検見川は「華見川」とも書く。つまり、検見川と花見川は同一の意味だ。この花見川は和歌に詠まれるなど町の歴史は古い。しかし、日本文学の中で検見川が登場することはほとんどなかったのではないか。 稲見さんは花見川の良さを見い出し、日本中に紹介した貴重な作家だ。その意味では花見川の住民にとって、大事にすべき作家だと思う。 「花見川のハック」は花見川をホームにする少年の不思議な冒険譚だ。ハックは主人公の名前であり、ハックルベリーに由来する。 稲見さんは花見川をミシシッピー川に例える。花島町の自然は美しく、雄大さも持ち合わせている。花見川区民なら、この小説を読めば、自分の町が好きになるだろうし、縁がない人なら花見川を見たいと思うだろう。 検見川送信所に続き、僕が掘り下げてみたいのが、この稲見さんなのだ。 日本初の国際放送77周年記念 「ほぼ満月ただの月見@検見川送信所」 10月27日(土)午後3時~、新検見川駅徒歩2分、はなのわ広場 イベントの様子は11月14日(水)の「ニュースC-master(ニュース・シーマスター)」(月~金曜、夜9時から9時55分)で 約10分間、特集されます。千葉近県の方はぜひ見てください。 「検見川送信所を知る会」では仲間を募っています。入会していただける方はこちらのメールフォームから「入会希望」と明記の上、 お名前(ふりがな): ご住所:〒 電話番号: メールアドレス: をお知らせください。 メールマガジン「検見川送信所J1AA通信」を購読していただける方は以下のURLからお申し込みください。 http://www.mag2.com/m/0000246340.html バックナンバーも読めます。 検見川送信所についてはここで過去記事をまとめています。 日本初の国際放送を行うなど日本の通信に大きな貢献をした近代化遺産・検見川送信所が取り壊しの危機にあります。これを保存、再生できないかを考えるプロジェクトです。 賛同してくださる方は以下のソースを貼り付けてください。 <a href="http://moleskine.air-nifty.com/photos/kemigawamusen/" target="_blank"><img src="http://image.space.rakuten.co.jp/lg01/47/0000060947/20/img2159e7f1zik6zj.jpeg" width="170" height="60" alt="musenhozon.jpg" border="0"></a> 楽天で自転車を探す 去年の日記は? 2006/10/31 勝手口のペイビング お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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