「私を幻想的と呼ばないでほしい」
岡崎市美術博物館のシャガール展にいってきました。 シャガールの展覧会といえば、リトグラフ作品が主であることが多いのですが 今回、初期の作品や肉筆画が多かったことに加え ユダヤ劇場の壁画、そしてタペストリーを観ることができ、圧巻でした! 初期の絵は家族を題材にしたものが多く 家族を見つめるシャガールの 視点を感じることができ、とてもよかったです。 寓話や聖書の挿し絵も味わいがありました。 企画側の気合いもひしひし感じられ、 非常に充実した内容の、すばらしい企画展示でした! 岡崎は学芸員さんのレベルが高いんでしょうね・・ シャガールは自らの作品を幻想的と評されることを嫌い 自身は現実主義者だ、と主張したそうです。 個人的には、彼の絵は、 幻想的というより、詩情豊かだと思いますし 作品によっては音楽が流れてくるようにも感じます。 また、奥さんへの愛情や喜びの想いが素直に描かれており これはほかでもない事実なんですよね、シャガールにとって。 その一方で、シャガールを次々襲った苦悩(政情不安、人種差別と迫害、妻との死別など)も 作品に率直にあらわれていて、幸福感溢れる絵ばかりでもないですし。 そしてまた、自分のルーツや故郷(ベラルーシ)を思う気持ちも すごく強かったのではないでしょうか。 そういう意味では、やはりリアルな絵を描く画家だったんだな、と思えます。 なにも写実のみが現実ではないですしね。 ユダヤ人として迫害されたこと、 奥さんへの想いを支えに生きてきたことも含め 「夜と霧」を記したフランクルとの共通点を感じました。 あと、シャガールの絵にたびたび登場する楽士をみていて思い出したのが 「屋根の上のヴァイオリン弾き」。 (あ、厳密には「フィドル」ですよね。 原題もヴァイオリン弾きがfiddlerになってたし) 以後、熊本、兵庫と巡回するそうですが 今回の展示はほんとうにお薦めしますので 九州、関西地方の方でご興味の向きは、是非足をお運びください。 ただし、ユダヤ劇場の壁画やタペストリーの展示は 岡崎以外でもみられるかどうか?は、定かではありませんが・・