猫は年をとると臆病になる
我が家の猫たち。子供の頃は原っぱをかけ抜けた向こうの空き家の庭で昼寝をしていた。小さい時はゴミを出しに行くと、向こうの角まで一目散に走ってついて来た。公園のネットの上は何周も歩いたし、夜中に帰って来ないことはザラで、真夜中、どこかの橋のたもとかなんかで猫の集会というやつがやっぱりあるのかしらん、などと思ったりした。ところがである。最近は原っぱは一メートルも歩くと止まってしまうし、ゴミ出し日は角まで来るとミャーミャー鳴き出す始末。ネットの上は同じ所だけを行ったり来たり。夜中も滅多に遠出はしなくなった。年々臆病になって、外に出ても私のそばから離れない。姿が見えなくなると恐怖かrか、大きな鳴き声をあげる。年と共に寝ている時間のほうが多くなって来ている。人間ももしかすると同じか、と思う。芥川にトロッコという小説があるが、人間でも、子供の頃は、色んなことを忘れて、どこかしら遠くまで行って帰り道分からず、ようやく家の明りを見つけてワンワン泣いてしまうということがよくある。子供って怖いもの知らずなのだ。なにが痛いとか、なにが恐ろしいとか、どこがどのくらい遠いとか、あまり分かっていないに違いない。年をとると色んなことが分かって、そのぶん慎重になるというと聞こえがいいが、実はやっぱり猫のように人間も臆病になるのだろう。さて、猫は家で飼うべしと言われるが、猫はその野生が可愛いし美しいと私は思っているので、我が家の猫はお叱りを受けない程度に自由にさせている。岩合さんのヨーロッパの猫写真なんか見ると実に羨ましい。が、まーそれによって早く死ぬということもあるだろう。猫たちには長生きをしてもらいたいから、年をとるほどに家から出なくなるのは好ましいことなのかもしれない。