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西宮にあるこのお店が好きである。
あの敷地内の静けさが好き。 初めて行ったのが夏の盛りのことだった。 座敷に通され 窓の外を見て 木々の鮮やかな緑に驚いた。 木々の葉が風に揺れ そのたびに 木漏れ日が揺らぐ。 美しい場所だなと思った。 次に行ったのは 春まだ浅い時期。 その時には 九州の実家の母も一緒だった。 母は数年前に癌の手術をしており いまだ経過観察の時期であった。 5年経って 何の異常もなければ完治であると お医者に告げられてはいたものの その時、手術を終えてまだ3年。 私自身 「まだ2年あるのか」と焦っていた。 もし再発したならば 母とともに 再び「播半」を訪れることもないのだなと思った。 母と静かな時間をと思い お店の方にお願いし 個室を手配して頂いた。 そのことには 心から感謝をしている。 他の方々から見れば 「2年なんてすぐではないか」かもしれない。 しかし 娘の自分から見れば 「あと2年もあるのか」という思いだった。 その「2年」の 何と長く 遠く感じられたことか。 お店に急に予約を入れ これまた急に個室をお願いし 何と不作法なと 自分でもわかっていた。 けれど これが 「播半」で母と過ごす 最後の機会かもしれないと思い 敢えてお願いしてしまったのである。 お店の方には 今でも感謝の気持ちで一杯である。 母と一緒に過ごした部屋の名前 床の間の掛け軸 障子に透けていた柔らかな光 今でもはっきりと覚えている。 できることならば 今度は秋の頃に訪れたいと思う。 山々の紅葉は鮮やかに映え どんなにか 美しい季節を迎えていることだろう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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