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ねじ花の茎をきりきて みずに挿す とほざかりゆく くるしみひとつ 上村典子「草上のカヌー」 ねじ花の魅力は何だろうと考えれば あの くるくると螺旋状に咲きつぐ姿だろうか。 緑の芝生の上に きれいな桃色の花を咲かせるその鮮やかさか。 田のあぜ道などで その姿を見つけると 嬉しくて思わず声を出してしまう。 大人の今では「ねじ花」と呼んでいるけれど 幼い頃は別の呼び名で呼んでいたような気がする。 何という呼び名だったろう。 記憶を頼りに何とか思い出そうとするのだけれど 思い浮かぶのは 今と同じく この花を見つけて喜ぶ幼い頃の自分の姿である。 幼い頃から この花はまるで蝋燭のようだと思っていた。 いや、この花に「蝋燭」という言葉は似合わない。 強いて言えば美しい「キャンドル」だろうか。 緑の絨毯の上で 仄かに揺らめくキャンドルである。 その花を手に取り眺めてみると その螺旋階段はどこまでも続いていくようだ。 まだ小学校低学年だった頃、 芝生の上に仰向けに寝ころび その花を見つめていたことがある。 どこまでも続く螺旋階段。 この桃色の小さな階段を上り続けて 花のてっぺんまで登り詰めたなら 今度は 透明の螺旋階段が天空へと続いている。 この花には 「憧れ」という言葉こそ似つかわしい。 空へ空へと上る階段。 天上への階段。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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