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家といふ かなしみの舟成ししより ひとは確かに 死へと漕ぎゆく 島田修二「渚の日日」 この歌については様々な解釈があるだろうけれど 初めてこの歌に触れたとき 少なからずショックを受けた。 何故「家」が「かなしみ」と結びつくのか分からなかったし 「家」と「死」とを関連づけて考えることもできなかった。 けれど一昨年、 おそらくは終の棲家となるだろう家を購入し 初めて上記の歌について共感することができたのである。 この家に住み始めた頃、小さな仏間を見つめていて思ったこと。 もし私が死んだら まず最初にこの仏間に眠るのだろうな、と。 北枕にして眠るべきだろうけれど この仏間の小ささではそれも不可能だなと思った。 結婚してから今まで 3つの家に住んだことになる。 1つめは新婚まもない頃。 できたばかりの新しいハイツで 1階も2階も全て新婚さんばかりであった。 お宅は披露宴はどちらで?などという会話もなされたり 時には2階から 干してあった座布団が落ちてきたり。 ぱさっと落ちてきた座布団を2階の人に届けに行ったのだけれど その座布団も本当にまだ買ったばかりという感じで 何だかとても初々しいというか 2階の人に対し、親近感と言うべきか、 新しい人生に踏み出したばかりの仲間のようにも思えて。 そのハイツには2年3ヶ月ほど住んだことになる。 出産で家族が増えることもあって もう少し広い官舎に移り住むことになったのである。 最後にそのハイツの鍵をかけたときのことを はっきりと覚えている。 もうここには戻れないのだと思い 結婚してからのいろんなことが頭の中を駆けめぐった。 2つめは同じ市内の官舎である。 そこには8年住んだことになる。 最後の掃除を終えて 全ての部屋を見渡して あの頃まだ赤ちゃんだった娘の落書きのあと、 何かをぶつけて作ってしまった傷、 みんなみんな忘れがたく かけがえのないものに思えた。 ここもまた 2度と中には入れないことを思いつつ最後の鍵をかけた。 そして3つめが今の家である。 住み始めて1年半。 ようやくなじんできたように思う。 ここが おそらくは終の棲家となるであろう。 この家に最後に鍵をかけるのは 一体どんな状況で、だろうと思う。 年をとって娘の家に行くときなのだろうか。 それともホームだろうか。 病院での治療を断り ホスピスに最後の入院に行くときなのだろうか。 いずれにせよ 終の棲家と信じるところでさえも いつかは 最後の鍵をかけるときが来る。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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