798870 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

ひよきちわーるど

ひよきちわーるど

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
2006.02.21
XML
カテゴリ:故郷
この季節になると
白い辛夷の花を思い出す。

中学校のテニスコートの傍らに大きな辛夷の樹があって
毎年この時期になると 真っ白な美しい花を咲かせていた。



風もほんの少し暖かくなって
運ばれてくる香りにも花の香を感じるようになって

そんな中 真っ白な花を咲かせる辛夷の樹は
多感な時期にさしかかりつつあった私の心を明るくしてくれた。






辛夷によく似た花に木蓮の花があるけれど

私は紫木蓮のことをずっと
「ムラサキモクレン」だとばかり思っていた。

けれどそれは「シモクレン」なのだと
一昨年の春 大切な友人に教えてもらった。






紫木蓮には幼い頃の思い出がある。

まだ私が小学生だった頃 学校から家に帰ってくると
母はいつも机に向かい、刺繍をしていた。

身体の弱かった母はほとんど家にいて
まだ幼かった末の妹と一緒に遊んだり
手芸を楽しんだりしていた。

結婚してからはずっと家にいて
はやりの流行歌も歌謡曲も知らず
いつも唱歌をくちずさんでるようなそんな母だった。






そんな母が刺繍の題材に選んだのが「紫木蓮」だった。

今も目をつぶると
木蓮のその美しい紫色を思い出す。




刺繍をする母のそばで私たち子どもはおままごとをし
母に話しかけ

私たち子どもの問いかけに母は小さな声で答え

思えば まことに穏やかな日々であった。







「みんながお嫁に行くときには
 この刺繍を持っていきなさい」と

母は私たち子どもに言ってくれた。





できることなら 
私はその「紫木蓮」の刺繍を持って嫁ぎたかったのだけれど

なぜだろう、母の作品を持って実家を出てしまったならば
私は生まれ育った家から完全に出て行ってしまうように思えて 

(九州からここ関西に嫁いでいるという時点で
 最早「完全に出て行った」と考えるべきなのでしょうが)


それでも、幼い頃の思い出の詰まった母の刺繍を
自分が持ち出してしまうのはいけないような気がして

そしてまた持ち出したならば
母とも完全に離れてしまうような気もして




・・・上手く言葉にできないのがもどかしいのだけれど

嫁いで13年。
未だに母の作品は実家に置いたままになっている。








あの頃、母はまだ30代。

そんな母の年齢を
私はこえようとしている。






今も思い出のなかでは

私は 刺繍をする母のそばに寄り添い



春の日だまりの中

布に描かれていく
紫木蓮の花を見つめている。










お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2015.12.08 01:46:43
コメント(4) | コメントを書く
[故郷] カテゴリの最新記事



© Rakuten Group, Inc.
X