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ひよきちわーるど

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2007.05.04
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カテゴリ:思い出の人

つい2,3日ほど前 いつもの消化不良をおこしてしまい
夜中の間苦しんでおりました。

床につきます時には何でもないのですが
1時間ほどしますと次第に腹痛が始まりまして そして全身に冷や汗をかくこととなります。

こうなりますと症状が治まりますまで最低でも4時間は必要となり
その間、気を失った方がましだと思うほどの苦しみと闘うことになります。

症状の軽いうちは頭の中で楽しいことを思い浮かべ、痛みから意識を遠ざけているのですが
その痛みも次第に強くなっていきますとただひたすら耐えるのみです。




・・・その痛みの中で ふと祖母のことを想いました。

私の持つ祖母のイメージは温かです。
彼女はいつも「たぁちゃん」と私の名を呼んでくれました。

私をそういう名で呼ぶのは 後にも先にも彼女だけなのです。

私の名を呼ぶときの祖母の声の響き、笑顔。
それらのものを思い浮かべるときだけは 心なしか腹痛も和らぐのですね。





・・・夜中の3時半、症状も少しずつ和らぎ
ようやく上体を起こすことができるようになるまでに。

先程まで全身汗びっしょりになって痛みに耐えておりましたので
なかなか身体に力が入りません。

けれど、そのまま床の中におりましても、返ってマイナスのことばかり頭に浮かび
精神的にもかなり辛くなりますので 思い切ってパソコン部屋に移動。

パソコンを起動させ
こういう時のための「精神安定ページ」にお邪魔致します。

そう、器を扱うサイトや
もしくはヤフーの、器のオークションページなのですね(笑)。

体調がこんな状態の時には自分の好きな世界に足を踏み入れるのが最も効果的だと思いますので
未だ腹痛は残っておりますものの 無理にでも器のページにお邪魔するのです。

お茶碗や小鉢を見るのが好きでして
その形や色合いにとても惹かれます。

殊に抹茶茶碗。
今の季節にはどんなお茶碗がよいだろうと思い
胸を躍らせながらあれこれ考えます。


・・・もちろんそんな時ですら腹痛のぶり返しのようなものはたびたびありまして
そのたびに冷や汗をかきながら「負けるもんか!」と 半ばムキになって器のことを考えます。

痛みの激しいときには お茶席でのお道具の取り合わせについて考えるのです。
丁度今頃の季節ですと卯の花や橘の花 そして不如帰。

・・・源氏物語の花散里の御方に想いを寄せ
彼の女人にふさわしいお道具類は一体どのようなものだろうと想像を巡らせます。





こんな体調の時に自身を奮い立たせてくれるもの・・・
それが器の美しさであることに気付きました時
私に器の良さを教えてくれた祖母に改めて感謝の気持ちでいっぱいになるのです。

当時まだ幼稚園生に過ぎなかった私に 祖母は様々な器を見せてくれ
ひとつひとつの器について説明してくれました。

その説明につきましてはほとんど忘れてしまっている部分もあるのですが
お茶椀を両手で包んだときの手触り ぬくもり、柔らかさ。
表面に描かれている文様の美しさ。

まだ5歳にも満たなかった私の心に
それらの器はまるで花のように明るんで見えたのでした。

それは 広い野原にところどころ咲きこぼれる可憐な花のようでもありました。







・・・今年の夏はまたもや酷暑となるのでしょうか。

その信じがたいほどの暑さに耐えるべく
実は毎年夏の終わり頃に あることをするのです。

いえ、あることをするとは申しましても特別なことではなく
ようやく夏の暑さも通り過ぎようとする時期に
桐箪笥の奥から浴衣を取り出しまして袖を通すのです。




その浴衣は祖母が私のために誂えてくれたものでした。
紺地に白い芙蓉の花をあしらったものです。

夏の終わりに咲く花を浴衣の上に咲かせる―――
いかにも祖母らしいと思いました。



毎年 ようやく暑い夏も盛りを過ぎました頃
1人その浴衣に袖を通します。

身に纏っておりますと「この暑さの中を、よくがんばったね。」と
祖母が声をかけてくれるような気持ちになりまして
しばらくはずっとそのまま その浴衣を身に纏ったまま部屋の中に座ります。









生きていくうえにおきまして 確かに様々なことがありますけれども
そのたびごとに 亡き人は私の心の奥から現れて 
優しい思い出をつれてきてくれます。


祖母が私の名を呼んでくれたその時の風景は今も深く私の心に刻まれていて

その時 祖母の後ろに広がっていた夕暮れの色
台所で母がたてていた夕餉の支度の音

居間に流れていた野球中継の声
私の隣に座っていた弟の洋服の色

その記憶は瞬時に、そして鮮やかに心によみがえります。





確かに多くのことに翻弄され 様々な出来事にぶつかることもございます。
憤慨することも納得できぬことも多くございます。


けれど 人は その思い出の温かさに触れて 
かつて自分を愛してくれた人のぬくもりに包まれて

また再び 
次の一歩を踏み出すことができるのではないでしょうか。
















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Last updated  2015.05.29 09:40:48
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