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ひよきちわーるど

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2008.03.29
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カテゴリ:思い出の人

昨日のお昼過ぎ 実家の母より電話があり
祖母が朝早く息を引き取ったことを知りました。
お通夜は明日の夜、そして告別式は明後日となります。

母の実家は阪神間にありますので
おそらく今日の午前中にも、母はこちら関西へ向かうことになります。

母は 自身が2歳の時に実母を亡くしておりますので
このたび亡くなりました祖母とは血のつながりはありません。

しかし、幼い頃より自分を育ててくれた祖母には深い感謝の念を抱き
このたび祖母が亡くなりましたことは
(かねてより覚悟はしていたこととは思いますが)
母にとりましてどれほどの衝撃か・・・と思うのです。



祖母はまことに小柄な、優しい瞳をした女性でした。
会うたびに「○○ちゃん」と、私の名を呼んでくれていました。

朝夕仏前に端座し
そして昨年受けた大手術の際にもベッドの枕元にお数珠を置き
決して祈りを欠かさぬ人でもありました。



出身は宮崎の都城。
遠く宮崎からこの関西に嫁いできて どんなにか心細かったことと思うのです。

そして嫁いできた先には
亡くなった先妻の遺した幼い娘たちが3人。

祖母は自身の血を分けた子供を産むこともなく
ただ、血のつながらぬ娘達を必死に育ててくれたのでした。




・・・確か数年前の春のことだったと思うのです。
母の実家に遊びに行きました時、祖母が私を仏間に誘うのですね。

なんだろう・・・と思いまして祖母のあとをついていったのですが
彼女は仏壇の奥から古いお経本とお数珠とを出し、こう言うのです。

「このお数珠はな、知代さんのお数珠やねん。」

そう、知代さんというのは
60年以上も昔にこの世を去った先妻です。





祖母は「この前、古い荷物を整理していたら、このお数珠がでてきてん。
    調べたらな、知代さんのお数珠やってん。」と。

見てみますと それはまぎれもなく日蓮信徒のものであり
経本も法華経方便品、寿量品でありました。

知代さんが日蓮信徒であったことは今まで全く知りませんでしたし
そしてまた、彼女にゆかりのある品を目にしましたのも
私にとりましては初めてのことだったのです。

・・・・はからずも、60年以上もの長い時を経て
知代さん、そして祖母、母、私と
同じ信仰でつながっていたことを知らされたのでした。





・・・祖母が知代さんのことを話す時の瞳は穏やかで
とても優しいものでした。

祖母はおそらくは同じ女性として
3人もの幼い娘を遺しこの世を去らなければならなかった知代さんの心中を
深く思いやっていたのでしょう、

遺影の中でしか知らぬ知代さんのために
祖母は自身の幸福よりもまず 
血のつながらぬ3人の娘のことを一番に考えてくれていたのでした。





もしも、ここに知代さんがいてくれたなら
このたび亡くなった祖母に対し
一体どれほどの感謝の想いを抱いたことでしょう。

・・・知代さんはさほど身体のつよい人ではなく
結局は30代の若さでこの世を去ったわけではありますが
遠く長野の地からこの関西に 祖父を慕ってお嫁入りしてきた人でありました。

「苦労をかけるかもしれません」との祖父の言葉に
「それでも、お嫁に行きます」と 全く知らぬ土地に嫁いできた人でした。

・・・多くの夢を抱いていたことと思います。
娘達との楽しい夢をたくさん思い描いていたと思うのです。

しかし、もともと病弱な人でしたので 
おそらくは生活全般にわたり支障があったものでしょう、
残されている当時の写真の中では 
私の母や伯母はいずれもねえやさん方に抱かれており
知代さんに抱かれている写真は一枚もないのです。

やがて国は戦争へと突入し
その最中 知代さんは3人目の娘を産んでまもなく持病が悪化、
肺炎を併発しあっという間に亡くなってしまったのでした。





・・・今夜、祖母は 
数十年暮らし続けてきた家に安置されています。

今日できることなら母の実家に行き、祖母に会いたかったのですが
来てくれるのは告別式だけでいいよ、と母に言われ
明後日行われます告別式に夫と私、娘の3人で行くことに致しました。

今夜、この時間
おそらくは母、伯母、そしてもう1人の叔母で祖母を囲み
どなたにも気を遣うことなく
祖母との最後の時間を過ごしているのだと思います。






・・・祖母に訊きたかったことがあります。

もしも、自分の本当の子どもができてしまったなら
先妻の遺した3人の娘たちに対し公平な愛情を注げなくなる・・・
そう思ったから
だからこそ、ご自分の子供を産まなかったのですか。


もしもそうであるならば

そのつよさと並外れた優しさとを
貴女は 
どのようにして培ってきたのでしょう。











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Last updated  2015.04.19 12:14:34
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