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ひよきちわーるど

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2008.09.01
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カテゴリ:my friend

月末 そしてこの月初めと
私自身、ご近所を新聞の集金でまわることとなる。

僅か40件ほどの集金なのでそう時間もかからないのだけれど
時折お客様方と、お庭に咲く花のことで話が弾んだりもする。


昨夜伺ったお宅では
あともう少しで白萩が花を咲かせるところであった。

「今年は白萩が遅いのよね」と その方は仰る。
・・・そういえば、2軒先のお宅でも
白萩は豊かに枝を伸ばすだけで未だ花は咲かせていなかった。







「さまざまのこと思い出す桜かな」と芭蕉は詠んだけれど
・・・私はむしろ 萩の花にこそ心を揺り動かされる。

在学していた大学には学生寮があり
その女子寮の中のひとつに住んでいた。

その女子寮の花・・・・寮花は白萩であった。

秋になると中庭に萩は咲き乱れ
その寮に住む女子学生は皆「白萩会」に属していた。




よく、寮の皆がまだ起きてこない明け方にひとり中庭に出て
白萩の枝に葉に 美しい露の降りるのを眺めていたものだった。

・・・こんなにも美しいものがこの世にあったのかと思った。
いにしえのうたびとたちの心がほんの少しでもわかったような気がした。





寮に住んでいた友人が私に言ってくれた言葉を
今も鮮やかに覚えている。

このことは数年前のこの日記にも書き綴ったことではあるけれど
友人に言わせれば・・私はこの白萩に似ているのだという。

それまで そんなことどなたにも言われたことがなかっただけに
(言われていたのは むしろ蒲公英とかイヌフグリとか・・ちっちゃい花ばかり)
少し面食らってしまった。


萩は誠に生命力のつよい植物であり
毎年 根元からばっさり剪定しても
その翌年には2,3メートルもの枝を伸ばし豊かな花を咲かせるという。




友人によれば 私は、独りでは生きてゆけない人間に見えるのだそうで
けれど長く付き合ってゆくうちに
本当は どんな状況にあっても何処にあっても
しっかりと生きる人間であることに気付かされるという。

・・・そんな友人の話を聞いている間にも 何だか照れくさく
身に覚えの無いような気もして(笑)

けれど、大好きな友人には
私はそんなふうに映っていたのか・・・と
心の何処か 仄かに温かくなったことを覚えている。






その友人の言葉を再び思い起こすこととなったのは
2人目の我が子を亡くしたときのことであった。

その前年に、私は当時住んでいた教員住宅のちいさな庭に
数本の白萩の苗木を植えていた。

そのとき、来年には綺麗な花が咲くだろうな・・・と思い
真っ白に咲く姿を心に描いていたものだった。


まさか その僅か数ヶ月後に
悲しみの底に沈むなど思いもよらぬ事であった。


11年前の丁度今頃の時期
夏から秋に移り変わるほんのわずかな時期

さすがにもう頑張れないと思い 悲しみに沈み
ただ、咲き初めた萩を見つめることしかできなかった。


音もなく揺れる枝を見つめ
ああ、ここは風の通り道なのだ・・・と思い
風の行く先を目で追いかけていた時
ふと、大学時代の友人の言葉がよみがえってきた。



・・・ちっちはな
どんな時にも強く生きていく人やねんで。




そうやって微笑んでいた友人の声が
今も胸に残っている。

その時、友人の声をこれから幾度となくよみがえらせながら
・・・もう少し、この地で頑張ってみようと思った。






萩の花はその優美さもまこと宜しいものではあるけれど
私がこの花に惹かれる理由は
ただ そのつよさにある。

たおやかに見えて どんな荒れ地にも適応し生長し
真っ直ぐに天に向かう。



一番最初の花が咲き初めると
次々に花開き、まるで雪を散らしたようになる。

そして花を見つめる私たちの心をも
真白く染め上げてくれる。




・・この花に言葉を贈るとすれば
私は「清流」という言葉を挙げるのかもしれない。

枝が仄かに風に揺れるのを見ると
一瞬一瞬の時の流れを感じる。

と同時に 自身の心も清流のようでありたいと願う。






前述の女子寮であるけれども
その寮歌の中に次のような箇所がある。


白萩(はな)咲き誇る朝霧に
深き絆の姉妹あり

慈父(ちち)のこころを我が胸に
白萩に誓うこの道よ





まことに 寮での生活は私にとってかけがえのないものであった。
そこで培った友情もまた生涯の宝である。

歌詞にあるように 深き縁によって
例え一時期ではあるにせよ生活を共にした友人たち。

そして友人の語ってくれた忘れ得ぬ言葉。





これから生きてゆくにあたりさまざまなことが起こってくることと思う。

そのたびに おそらくは随分と苦しむだろうけれど
18歳から22歳という多感な時期に出逢った友人達との思い出を胸に
自分らしく生きてゆけたらよいと思う。



そしていつか
大切な言葉を残してくれた友人に

その言葉を24年もの間ずっと胸に抱いてきたこと
そのおかげで悲しみを少しずつ乗り越えつつあること

そして つよくありたいと
これからも自分を叱咤し続けるであろうこと




それら全てを
伝えられたらいいと思う。




 





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Last updated  2015.03.23 13:24:00
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