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ひよきちわーるど

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2008.09.05
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カテゴリ:思い出の人

数日前、少し悲しいことがあり
ここしばらく物思いに沈むことが多くなっていた。




・・・ふと思い立ち 桐の箪笥から空蝉の香を取り出して
封を切り、お香を家の中のあちらこちらに置いてみた。

仲秋の名月は過ぎてしまったけれど
せめてもの名残に 兎の香合に香をしのばせ玄関に。

小鳥の取っ手の付いたガラスの器に香を入れ
陽の射す明るい洗面台に。

残ったお香は柔らかな布に包み、
家の中のいくつかの箪笥の中へ。



ほんの少しだけ 鞄の中にもしのばせようかと思ったのだけれど
香りには人それぞれ好みもあるだろうし

自分ではよかれと思ってしたことでも
他人様にとってはご迷惑でしかないこともあると思い
それについては取り止めに。




・・・お香を長いこと桐箪笥の中に入れていたので
お着物や帯、伊達締めなどに仄かに香りがうつっており
身に纏うたび甘やかな気持ちになる。

けれど もしやこの移り香が 
社中の方々に御迷惑をおかけしているのでは・・と心配になり
お訊きしてみたのだけれど

幸い、他の方々には全く気付かれぬほどの香りだったようで
ようやく安堵し、この移り香は自分のみのささやかな楽しみとなっている。






冒頭に書いた、悲しい出来事というのは
・・3年前の秋にお亡くなりになった
大切な友人のことを思い出してのことである。

数日前、大阪でのコンサートを終え
帰り際、タクシーにて大阪駅に着いたのだけれど
その着いた改札口が「桜橋口」だった。

この桜橋改札口は、私が友人と会うときにいつも使っていた待ち合わせ場所であり
私にとって大切な思い出の場所である。




タクシーから降りて、何の気無しに駅の方を見た途端
「桜橋口」との文字が目に飛び込んできたのだった。

・・・こういう不意打ちは 本当によくない。

恥ずかしいこととは知りながら
たちまちのうちに涙がこぼれてきた。




余命宣告を受けた友人に対し、何の力にもなれなかった自分。
どんな言葉をかけてよいか途方に暮れていた自分。

それまでの自身の経験や様々なことを総動員し
自分に出来うる限りの想像力を働かせ
友人に寄り添っていたいと思ったのだけれど
・・・それでも、無力だった自分。




改札口を通り抜けながら様々なことが脳裏に浮かび
私はいたたまれなくなってしまった。

あんなに早く逝ってしまわれるのなら
辛い検査も治療も必要なかったのかも知れない。

あんなに痛い思いをなさらなくてもよかったのかも知れない。



ご自分が一番辛かったのに
周りの私たちに心配をかけまいと いつも笑顔でいらした友人。
亡くなる直前にも、あんなにも優しく温かだった友人。




・・詮ないこととは知りながらも
今でも、友人のブログページに行く自分が居る。

まかり間違って日記が更新されているのではないかと思ってしまう、
そんな自分が居る。







このたび、物思いに沈みながら空蝉の香袋を開けてしまったことに
ほんの少し、後悔の念を抱き始めている。




友人のことを偲びながら聞いた空蝉の香。

これからこの香りに触れるたび
私は 友人のことを悲しく思い起こすのだろうか。





・・これ以上悲しい思い出を増やして
一体どうするのかと自身に問うて 

それでも答えようもなく



柔らかな香りの中

独り 佇んでいる。












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Last updated  2015.03.23 13:15:02
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