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ひよきちわーるど

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2009.10.10
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カテゴリ:故郷

夏の終わりから引きずっている喘息が
このところの朝夕の冷え込みにより、また少しずつ悪化している。

呼吸の辛さを思うたび やはり
帰省先の九州で無理をしなければよかったかな・・・などと
考えてもいる。



この夏には、8月2日から9日まで帰省したのだけれど
九州に帰り着いたとたん、娘も私もいきなり37度後半の熱を出してしまった。

ひよこの平熱は35度前半なので
さすがに37度後半の熱が1週間も続くとなると
体力の消耗は想像以上。

・・・そこでおとなしく寝ていればいいものを
実家でも、いやむしろ実家であるからこそ
長女の悲しい性格を遺憾なく発揮(涙)。

要するに、熱をおして
実家の家事のほとんどを引き受けてしまったのである。

朝5時半には起床、食事作りから掃除洗濯
とにかく一日中、ばたばたと動き回っていた。


だって、実家に帰ってこられるのは一年に一度だけ。
親孝行できるのも、一年に一度だけ。

そのことを考えたら おとなしく床についてなんかいられなかった。

せめて、私が実家にいるときだけは
母にゆっくりとしてほしかったし
元気に頑張っている姿を見せておきたかった。



けれど、そういう思いとは裏腹に
夕刻あたりになるとダウン。

熱はますます上がる一方だった。


家の中は何処にいても冷房が効いていて
かといって、その冷房を切ってしまうと
今度は他の家族が辛い思いをしてしまう。
(宮崎の暑さは尋常ではない)

せめて冷房の弱い玄関に横になっていたのだけれど
やはり、ここはまずい(笑)。

お客様を仰天させること間違いなし。





・・・実家の庭は 夕刻になると風の通り道となる。

欅の葉が風に揺れ 百合の花も俯いて咲いている。

杜鵑も一輪だけ花を咲かせ
父の指さす方には 姫沙羅の木も植わっていた。




ウッドデッキに腰を下ろし
しばらくの間 ひとりで庭を眺める。

庭の隅には小さなハブ茶の芽も顔を出し
花魁草も夕方の光を受けて

・・・本当に、ここは静かなところだと思う。





やがて 床を敷いたから眠りなさいと
母が私を呼びに来てくれた。

重かったろうに、母屋では冷房が効きすぎるからと
別棟にまでお布団を運んでくれたのだった。


・・・母のために色々と頑張ろうと思ってはいても
やはり、母に対して負担をかけてしまう。

申し訳ないと思いつつ
母の用意してくれた床につき
しばらくの間ゆっくりとさせてもらうことにした。



壁や床を樅の木で仕上げているため
部屋の中は木の香りでいっぱい。 

冷房などつけずとも ひんやりとして心地よい。

窓を開け放し 庭の蝉の声を聞きながら
いつの間にかほんの少しまどろんでいた。






・・・帰省して幾日目かの夕刻
台所で夕食の用意をしていたのだけれど

ふと気付けば家の中に両親の姿はなく
ああ、そういえば
さっき「買い物に行く」と言って出かけていったことを思い出す。

隣の部屋ではお熱を出している娘が眠っており
私は一人でことことと夕食の準備に取りかかっていた。





・・・ふと、遠い将来のことを思い浮かべてみた。

いや、遠い将来などではなく
もしかすれば さほど遠くもないことかもしれないとも思う。



今から長い時間が過ぎてゆき
父もしくは母が先に逝き
そうしてその数年後に 遺されたもう一人の親も逝き

その時私は
一体どのような思いでこの台所に立つのだろうと思う。



告別式を終え、この実家に集まってきた親戚にお茶を出そうと
悲しみをいったんは胸におさめたまま
私はお湯を沸かしお茶の葉を用意し、この台所に立つのだろうか、と。

もう二度とこの家に帰ってこない両親を瞼に描いて
一体どのような気持ちで、と思うのだ。



そのことを思えば
今、買い物に行っている親を待ちながらのこの夕餉の支度は
どんなに有り難いことなのだろう・・・と。

待っていさえすれば 親は「ただいま」と
この家に帰ってきてくれるのだ。





・・・実家で過ごすこの短い7日間。

少しの時間も無駄にすまい、と心に決めた。


そしていつか 悲しみをおさめたまま台所に立つだろう自分に
「負けるな、頑張れ」と 万感の思いを込めた。





・・風の吹き過ぎる庭に降り立ち 空を見上げる。

金木犀の木も桜樹もみな 空をさして佇んでいる。



父が「この花の名、知っているか?」と野牡丹を指し

母は「楓が窮屈そうでかわいそうだ」と
ベランダのすぐ下の青楓を気遣っていた。



敷地内の一角には母の丹誠込めた畑。

父が植えた柿、桃、桜桃。実のなる樹々。
少し熱のひいた娘が「美味しい」と言って
ブルーベリーを摘んでは口に運んでいた。

柿の木の一番高いところになる実を
父が脚立に乗って収穫してくれた。



・・・本当はこの日記に庭の様子を載せてみたいのだけれど
帰省していたときには母のカメラを借りて撮影したため
今、画像は未だ母のデジカメの中である。

現像を頼みたいのだけれど
現在身体の調子を崩し、本調子ではない母にお願いするのも申し訳なく
おそらくは次に帰省するときまでの宿題となりそうである。






両親の想いのこもった庭を
遠く離れたこの関西の地で思い返し



懐かしく、あたたかく
かなしく




たったひとりで
さまざまな思いにひたる

そんな秋である。













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Last updated  2015.03.19 13:45:29
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