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カテゴリ:故郷
先日、ふと思い立って お気に入りのお店に立ち寄った。 ここは昨年、実家の母が関西に来てくれた折に案内したお店。 落ち着く空間で、独りで時間を過ごすにはよい場所。 庭には翠が溢れ 青楓が風に揺れていた。 藍色の座布団に座り しばらく 静かに庭を眺める。 この座席は、昨年、母が座っていた場所。 目の前には母が「可愛いね」と言っていた小さな花瓶。 ・・・その花瓶を見るなり 思わず涙がこぼれてしまった。 涙はあとからあとから出てくる。 止めようと思うのだけれど どうしたことか出来なかった。 ちょうどそばには誰も座っていなかったので 窓の外に顔を向けながら ひとしきり泣いた。 もしもここ関西が自分の生まれ育った土地であるならば こんな時 こんなにも心細い思いはしなかっただろう、と。 ここでは母、妻、嫁として生きて 知らぬうちに肩に力を入れ続けてきた。 ここ関西での、母との思い出はあまりに少ない。 もしもあるとするならば 母が関西に遊びに来てくれたとき いろいろと案内した場所だけである。 しかし、その場所さえも多くはない。 今になって その限られた場所を独り訪れ 母との少ない思い出をかきあつめ やっとの事で 自分を支えている。 一連の検査も滞りなく済み その結果も大丈夫であるとのお墨付きをいただければ この不安な日々のこともやがて笑い話となるのだろうけれど それまでは 母に心配をかけたくない、と思う。 実家への電話では 「大丈夫、大丈夫。定期検診のようなものだから」と言っているけれど 長女としての条件反射とでも言うべきか やたら明るく何でもないかのように話してしまう。 実家への電話を終え 受話器を置き ふと、思いを馳せる。 故郷を離れ 遠くに嫁している友人達もまた おそらくはこんな風に生きているのだろう、と。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2015.02.26 07:46:34
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