ひよきちわーるど

先日、娘の春物の洋服を買いに行ったときのこと。


ふと、婦人服コーナーに目をやったところ
自分好みのものが。

これ、いいなあ・・・と思いつつ手に取ってみたのだけれど
ふと、これは本当に自分に必要なものなのか？と思い
購入を諦めてしまった。

もしかしたら数ヶ月の後
もしくは数年の後に再発するかも知れぬ自分が
今さら洋服を購入してどうなるのだと。



・・・こういうところなどまさにA型気質。
つい、０か１００かで考えてしまう。

これから先、自分の気質がどう変化してゆくのかそれは分からないのだけれど
今はこんな自分を許しつつ、好きなように生きてゆこうと思う。





数年前、神戸にて開かれた
饒宗頤氏の展覧会を観に行ったことがある。

氏は中国の書道家、画家であり
我が国との交流も深い。

最初、私は仏画や書にはほとんど興味もなく
この展覧会にも行くつもりはなかったのだけれど
夫の熱心な誘いに負け（笑）足を運んだ。



ここでは詳細は省くけれど、行って本当によかった。

氏の仏画の前で動けなくなった。

とにかく、衝撃を受けた。



その絵のどこがすごいのか
どういう意味を持つ絵か
そんなことはどうでもよくて、ともかく、衝撃だった。

人間、本当に感動すると言葉が出ない。



あれはああいう意味を持つもので
作者の置かれた時代背景は・・・・うんたらかんたら、
その絵画に隠された意味はうんたらかんたら（笑）

そうやって解説することも大切だろうけれど
もう、そんな、本や解説書から得たものなどかなぐり捨てて
本物の絵の前に立て！と言いたい。



今考えてみても、あの絵画のどこがすごかったのか
うまく説明できない。

ただ感じたのは
氏の抱える宇宙は、こういうものなのだ・・・と。


人は皆、いや、生きとし生けるものはみな
宇宙とつながっていて
そして自身の中に宇宙を内在させ

ある人は絵画で　そしてある人は文章で
皆ありとあらゆる方法でもって
内なる宇宙を表現しているのだと。


もっと言えば　宇宙そのものが大きな生命体であり
「生きよ」「幸せであれ」とのメッセージを常に発しているのではないか。

そのメッセージを「表現者」が「自分だけの方法」で
周りの私たちに伝えているのだと。


ここで私が「表現者」と書き
「芸術家」と書かなかったことについて。

メッセージを周りの人間に伝えるのは
何も芸術家だけではないと思うから。

選ばれし者だけがメッセージを伝えるのではないと思うため。



生きている人は皆、表現者なのだと思う。

その表し方に、そして影響を及ぼす範囲の大きさ、深さに差があるだけで
皆、同じく表現者である。


先ほども書いたことではあるけれど
そのメッセージをある人は絵画で、そしてある人は文章、和歌、音楽で。

スポーツであらわす人もあるかも知れない。

そして大多数の人々は自分の振るまい
そして　その時々の自分の言葉で。





・・・・このことに気付かせてくれた饒宗頤氏に
こころから感謝、そして驚いてもいる。

何も知らなかった、感じていなかった白紙の私に
氏の仏画は語りかけ、気付かせてくれた。





こういうことに気付かせていただいた数年前。

その頃４０代前半だった。


これから５０代、６０代になるにつれ
この考えはどのように深まってゆくのだろうと楽しみに思った。

年齢を重ねてゆくことは
（確かに身体的な面では衰えてゆくばかりだけど）
なんて興味深いのだろうと心躍った。





それだけに　このたびの病気は無念である。

もしかしたら　運が良ければこのまま年齢を重ねてゆけるかも知れない。
でも、そうならないかも知れない。


４０代前半に氏によって気付かせていただいたこと。

それらをさらに深めてゆくための５０代、６０代の日々が
自分はないかもしれないと思うと、悔しい。