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2012年10月17日
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「お局真紀子の素敵な毎日☆高校時代編」

高校1年のとき、私は化学部に所属していた。
ここの部長先生は、「君たちは受験のプロだ」を繰り返す名物先生。
教え方はとてもうまく、化学の実験道具の扱いに執念ともいえる
情熱を傾ける先生だった。

この先生、一見厳しそうだが、実は、やはり厳しい。
でも、化学の実験をがんばる化学部員には理解を示してくれていた。
その恩恵に一番に浴したのは、私かもしれない。


化学部では、結晶班に属していた。
いろいろな結晶を作るだけの地味だが根気の要る作業を繰り返す。

作り方は、先輩から教わった。

作りたい溶液を過飽和状態にしてシャーレにとり、そっと放置する。
数日たったら、小さな結晶ができる。これが種となる。
これをてぐすで巻いて、大量の過飽和溶液につるし、そっと放置する。
うまくいけば、どんどん結晶が大きくなるのだ。

私の担当は、水酸化マンガン(だったと思う)。
水溶液にするときに、加熱のスピードが速すぎると水溶液が白濁して
使い物にならなくなる。しかし、ある程度早く水溶液を作らなければ
成長していく結晶に新しい溶液を加えることができない。

結構難しい作業だった。
一度だけ、ある程度大きな(直径5cmくらい)のができた。
しかし、一箇所、小さな結晶がくっついたような、いびつな形だった。
失敗作だったので、写真に撮ることもなく、そのまま溶かして
次の溶液にしてしまった。(惜しいことをした)

何度繰り返しても、そのときの以上にきれいな結晶を作り出すことが
できなかった。

何度も何度も、先生に、過酸化マンガンの粉末の購入を依頼した。
その都度、先生は、「わかった。」といって購入してくれていた。
が、あるとき、助手の女性に言われた。

「あの粉末は、ほかの薬品に比べて非常に高価です。なるべく
慎重に作ってください。」

先生は、私が溶液作りに失敗して、白濁させてしまい使い物に
ならなくなった溶液について、注意したり、作るのをやめるように
言ってきたことはなかった。なんとか、部の予算をやりくりして
失敗を繰り返す私のために薬品購入のお金を捻出してくれて
いたらしい。悪いことをした、と思った。

毎年、化学部は夏休みに水質検査に行く。

女子は近場、あるいは校内の水を採取する。
男子は自転車で石手川の上流や河口の水を
採取してくるのだ。

1年の水質検査のとき、同期の化学部員だった
稲荷くんは、真っ黒なシャツと真っ黒なズボン、という
いでたちだったことを記憶している。
(夏休みでも、普通なら制服だが、このときは非常に
男子は遠出するので、動きやすい私服でかまわない、
ということだった)

夕方、薄暗くなって稲荷君は戻ってきた。
全体的に、灰色がかって見えた。
途中で着替えたのか、と思い近づくと、全身、塩をふいている。

「暑うて汗かいたけん。それが乾いてこんなになったんよ。」
(暑くて汗をかいたから。それが乾いてこんな風になった)

いわゆる、全身、結晶状態。
よほど、このまま現状保存して、文化祭に陳列しようかと
思いたくなるほどの、みごとな全身、小さな塩の結晶。

みんなの帰りを待っていた女子は思わず
笑ってしまった。

「黒い格好、しとったけんねー」
(黒い格好をしていたからだね)

女子の声に
「笑うなや。ほんとに大変やったんぞ。」
(笑うな。本当に大変だったんだから)
と、大きな目をますます大きくして稲荷君は言う。

やがて、水源までさかのぼって水を取りにいった清水先輩も戻ってきた。

全員の無事帰還を祝して、恒例のカルピスでカンパイ、となった。

このカルピス、この日のために助手の方が買って冷やしておいてくれたのだ。

実は、夏休み前から、この助手さん、こっそりカルピスを作って
遅くまで残って実験するまじめな化学部員に出してくれていた。
助手さんの作るカルピスはいつも、家で作るのよりちょっと濃かった。

こっそり(助手さんに聞こえないように)
「ちょっと濃いね。」

などと話していると、横で聞いていた清水先輩は
「おれは今まで、カルピスを飲んで『濃い』って言ったことがない。」
と言った。

なるほど。

助手さんに頼んで、次に出してもらうときには
清水先輩の分だけは特別に濃くしてもらった。
それでも先輩は「濃い」とは言わない。

「カルピスに氷を入れたのじゃないと俺は飲まない。
その分、薄くなってしまうんだ。」
とは、清水先輩の弁。
その後、濃度をあげても、清水先輩は「濃い」とは言わなかった。

そして、いよいよ水質検査の日。
次々と帰ってくる部員には、麦茶のサービス。
冷たく冷やした麦茶に、生き返った心地のみんな。

最後、全員が顔をそろえたタイミングで、カルピスの準備をする。

「かんぱ~い!」
先生の発声で全員、グイっと飲む。

「濃い!」
清水先輩の大声。

やったぁ~!

ここは化学部。特殊な器具や道具はいくらでもそろっているし
購入のツテはいくらでもある。
助手さんに助けてもらって、原液をキンキンに冷やすだけでなく、
先輩用に特性のカルピスを作ってもらったのだ。

どうやって清水先輩に「濃い」と言わせたか、それは秘密。
その場にいた人ならわかったかも。





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最終更新日  2012年10月17日 11時07分47秒



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