クルマのパワーウィンドウを下ろし、冷たくなった風を浴びて走る昼下がり。
仕事で久しぶりに訪れた小さな町。
流れて行く町並みの中、懐かしい建物が見えてきた。
ある高校の体育館。
あの頃の思い出が、あざやかによみがえる・・・・・。
高校生になりたての頃、ボクシング部に入った友人の試合を
中学時代の男女混合の仲良しグループで応援しに来たっけなぁ。
土曜の昼下がり、それぞれ別々の高校に進学した仲間が、駅の改札口で待ち合わせをして集まった。
知らない高校の門をくぐるドキドキ感。
体育館で声援の響く中、仲間は一回戦で負けちゃったけど、
帰り道は久しぶりの再会に嬉しくてワイワイ駅までの道のりを歩いたっけ。
ワイワイしているみんなより、一歩下がって歩いている色白の女の子。
その子こそ、まだ一週間前から付き合いだしたばかりのボクの彼女。
初めて心から好きになった人と付き合うドキドキ感。
『付き合う』っていっても、いったいなにをすればいいんだろう?
そんな疑問に悩まされながら、毎日を過ごしていたっけなぁ。
帰り道、喫茶店に入って仲良しグループが再会できたことを喜びあった。
いつもは、はしゃぐのが大好きな彼女。
この日は、おとなしく、はにかんで座っている。
ときどき目が合うと、ニッコリ微笑んでみせる喧騒の中。
「○○ちゃんとホンダイスくん、お似合いじゃない?付き合っちゃえばいいのにぃ?」
突然こんなことを言われ、動揺するボクら。
誰にも気付かれないようにテーブルの下で、クツのつま先をツンツンしながら、悪戯っ子のように微笑む彼女。
みんなの前では、テーブルを挟んで、目と目の会話。
照れくさくって、ちょっぴり恥ずかしくって、まだ誰にも付き合ってること報告してなかったな。
友達以上恋人未満から発展して、今付き合ってる事実は、まだ二人だけの秘密。
ホントは、お互い好きなのに他人を装って、みんなの前ではすましている。
いつボクたちが付き合ってることバレちゃうんだろ?というドキドキ感。
発表したら、みんなびっくりするだろうなぁっていう優越感(笑)
最寄りの駅で解散してからは、自転車をこぐのをやめて、
満天の夜空の下、二人で手をつないで帰ったね。
柔らかい手のぬくもりに、なんかドキドキしすぎて、たわいもないことをいっぱい話したっけなぁ。
あの頃は彼女のこと、好きで好きでたまらなかったけど、それをどう表現していいかわからないで戸惑ってたっけなぁ。
あの時、キミのオススメだった洋楽のアーティストは、ボクにとっては、まったくチンプンカンプンだったよ。
・・・日だまりのきらめく町並み。
バックミラーの中であの頃の思い出がどんどん小さくなってゆく。
今は、秋色の風と共に・・・。