「ああ~、疲れた!」
「お帰りなさいませ、お嬢様」
「ねぇ、ホンダイス!
ディナーの用意は出来てるのかしら?」
「はい。・・・しかし、お嬢様、泥だらけでございます。
まず、お風呂に入られてはいかがかと・・・」
「泥だらけは仕方ないのよ。
サッカーやってると、どうしても汚れちゃうのよ」
「お嬢様のここぞというときのシュートは素晴らしいですね。
今日もチームをぐいぐい引っ張って完璧な試合展開でした」
「あら?今日もホンダイスあの競技場にいたの?」
「さようでございます、お嬢様。
いつでもお嬢様のご無事な姿を見届けるのが執事の役目でございます」
「あっそう・・・ちょっと間違えたらストーカーよね。
ま、いいわ。ディナーの支度をしてちょうだい」
「かしこまりました、お嬢様。
まずは今夜の食前酒です」
「え~と・・・ちょっと待ってホンダイス!
これってお酒じゃないわよね?
紅酢(ホンチョ)ってKARAがCMやってるアレでしょ?
ボトルにKARAの写真がプリントされてるって理由だけで買ってきちゃったんでしょ?
完全にあなたの趣味よね!」
「するどい!さすがでございますお嬢様」
「飲めば美容と健康を維持できて、KARAのボトルも手に入る。
あなたにとって、究極のKARAグッズをみつけたようね」
「さようでございますお嬢様。鮮やかな謎解きでございます」
「そういえば、あなた新宿のアルタ前でKARAを出待ちして失敗したそうね?」
「うっ!・・・私、その件からまだ心の傷が癒えておりません。
お嬢様、そのお話はディナーをテンコ盛りにして召し上がったあとにいたしましょう」
「お腹すいたから早く持って来てちょうだい!」
「かしこまりました」
「まずは中華風サラダでございます」
「ちょっと待ちなさいよ!
確かに野菜の量がハンパないくらい多いけど、これってつけ麺でしょ?」
「ご明答でございますお嬢様」
「あなた何考えてるのよ!?」
「日本の経済と発展でございますお嬢様」
「そうじゃなくて!・・・相変わらず絡みづらいわね!
早くご飯持って来てちょうだい!」
「かしこまりましたお嬢様」
「ちょっと待って!ちょっと待って!
おにぎり10個もどーするのよ!
食べれるワケないでしょ、こんなに!」
「さようでございますかお嬢様。
私なら10個くらい余裕で食べてしまいますが」
「どんだけ米を消費してるのよ!
しかも、このお屋敷で作ったものじゃないわ!
コンビニで買ってきただけじゃない!
手抜きよ!手抜き!」
「・・・たぬき?
今、たぬきと申されましたかお嬢様?
きつねではなく、たぬきそばでよろしかったでしょうか?
申し訳ございません!
私がご用意してたのは、たぬきそばでも、きつねそばでもなく・・・」
「盛り蕎麦をご用意してしまいました」
「ぎゃーっ!!」
「奇声をあげるほど狂喜乱舞していただいて、ありがたき幸せでございます」
「違うわよ!あんたバカァ~?
どんだけの量を茹でちゃえばこんなになっちゃうのよ!」
「たった700グラムほどで」
「もういいわ!次の料理持って来てちょうだい!
肉料理が食べたいわね!噛んだとき、ギュウッ!ギュウッとなるようなビーフをね」
「ギュウッギュウッ!ですね。
かしこまりましたお嬢様」
「んがーっ!!!
牛丼2杯もどーするのよ!紅生姜も盛りすぎだってーの!」
「お嬢様がギュウッ、ギュウッ、って2回おっしゃったから、2杯ご用意させていただきました。
この秋冬は、生姜を使用した料理やお菓子がブームとなっております。
ここなら紅生姜はいくら食べても無料でございますお嬢様」
「ここってなによ!?ここは牛丼屋でしょ?
私は自分が住んでるお屋敷で食事してるのよ!
ここはここなの!ここはここ!わかってるの?ここはここ!」
「はい、かしこまりましたお嬢様。
ココア6杯でよろしかったですねお嬢様」
「違うでしょーっ!抜群のバカね、あんた!」
「ちょっと、からかってみただけですよお嬢様。ジョークです」
「さっきから、お嬢様とのやりとりが長いので、退屈だったから回転寿司を20皿ほど食べてしまいました」
「ひ~っ!なんで私より先に食事しちゃってんのよ!
しかも大量摂取っ!」
「お食事の用意ができましたよお嬢様」
「でかいっ!デカすぎだってーの!
ンもう~!私の事、なんにもわかってないっ!」
「そんなことございませんよお嬢様。
1978年9月6日生まれ
身長164センチメートル
体重55キログラム
・・・お嬢様のプロフィールは全て存じ上げてございます」
「なんで私のプロフィールまで知ってるのよ!?
それより早くディナー持って来なさいよ!」
「かしこまりましたお嬢様」
「ぎゃーっ!!!量が異常だから!量がっ!
あんた、さっきからなんなの?
こんなに大量の食べ物ばっか!
ゴリラのエサじゃないんだから!」
「ほげーーーーっ!ライスが3D状態よ!ムダに尖ってるわよ!」
「ビッグマックばっかじゃないのーっ!普通、同じもんばっか5個もいっぺんに食べないわよ!」
「・・・・・んんん~。
さきほどから、私・・・
気になることがひとつございます」
「なによホンダイス?」
「失礼ながら・・・」
「ん?・・・なに?」
「お嬢様の目は節穴でございますか?」
が~~~~んっ!!!
「・・・ちょっと待ちなさいホンダイス!
あなた・・・
今・・・
私に絶対に言っちゃいけないNGワードを口にしたわね」
「はっ!?」
「誰が節穴の目よ!
誰がプレデターがマスク脱いだときの顔にそっくりよ!?」
「私はプレデターなんて言っておりません!
お嬢様、自虐行為で笑いをとるのはおやめください」
「私を誰だか知ってるの?
なでしこジャパンのキャプテン・澤 穂希(さわ ほまれ)よ~!
もうあんたなんか、クビよっ!
クビ!クビ!クビ!クビ!クビ!クビ~ッ!」
「しかし、穂希お嬢様、まだデザートがお済みではございません」
「デカすぎじゃ~っ!
クビ!クビ!クビ!クビ!クビ~ッ!」
・・・こうして、地雷を踏んだ執事のホンダイスは、長く仕えたお屋敷のお嬢様から、お暇をいただいた。
執事ホンダイスは、次にお仕えするお屋敷を探して、今日も放浪しているらしい・・・。
「いったい、私の決めゼリフのどこがお嬢様の逆鱗に触れたのでしょうか?
謎です・・・。
謎解きはディナーのあとで・・・。」
(つづく)
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