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カテゴリ:日本の作家が書いた歴史小説
江戸時代は農民にとって辛い時代でした。身分は武士のすぐ下とはいえ、事実上は彼等の収める年貢が藩を支えていたのです。場所柄によっては作物の取れ高も違います。それなのに、上の都合で国替えを言われてはたまりません。
これは実際に起こった、農民の、農民による、農民のための国替え反対運動です。 義民が駆ける 藤沢周平 講談社文庫 かつて「たかが野球選手」発言で顰蹙を買った某氏がいたが、江戸時代、身分制度では二番目であった彼等は、間違いなく「たかが農民」という扱いだった。「生かさぬように、殺さぬように」と年貢を取り立てられ、強訴、一揆などの反抗をしようものなら、きつい仕置きが待っていた。 天保11年11月初め、荘内、川越、長岡の三藩の藩主に対して、三方国替えの幕命が下りた。荘内藩14万8千石の酒井忠器を長岡へ、川越藩15万石の松平斉典を荘内へ、長岡藩6万8千石の牧野忠雅を川越へ、それぞれ移封するというものだ。藩財政の逼迫した川越藩主が実収21万石と伝えられる内福のいい荘内藩への転封を目論んで、幕府の実権を握る前将軍家斉に取り入った。その家斉の内命を受けた老中水野忠邦が画策した理不尽な国替えで、200年にわたって荘内を領してきた酒井家は実質1/3の禄高に落とされる事になった。荘内藩の家中は長岡に移る準備にとりかかるが、ここで思いがけない事が起きた。何と、農民達が国替えに「NO」と言い、次々に江戸に向かって駆け始めたのである。 この物語は藤沢作品には珍しく、群像劇である。国替えを画策する老中水野忠邦ら幕府側の描写から始まり、次に命令を受け取る荘内藩家老松平甚三郎、更に国元側では荘内領京田通西郷組の書役本間辰之助、農民達へと次々と主人公が変わる。振って湧いた一大事に反対する者、速やかに事を運ぶ者、どちらに転んでもいいように手を打つ者、動きを探る者の行動が複雑に絡みあい、更に不測の事態も起こって先が読めない。彼等より力も機会もある大名が、妙に醒めている『密謀』に対し、「勝てるという成算があったわけではない。上に立つ者に説き伏せられて行ってきたものの、半信半疑だった」農民達が、自分達にできる極めて愚直な方法で賭けに出た本作は、遥かに後味が良かった。そしてクライマックスでは、例え取り戻したのが、「手垢に汚れた変わりばえもしない日日」であったとしても、「その変わりばえしない暮らしが、いまは眩しく光りかがやくよう」に見えた農民達の心の動きが乗り移ったかのように、心が高ぶってゆくのを止められなかった。 氏がタイトルにつけた「義民」にはある皮肉が込められている。「雖為百姓不仕二君(百姓といえども二君にまみえず)」を旗印に押し立ててはいるものの、百姓の動機はそれだけではなかった。去っていく領主は、貧困な赴任先のために根こそぎ食料を持って行こうとし、貧しい領地からやってくる新領主は、不足している食料を奪おうとする。この二重取りで最も苦しい立場に置かれるのは、実は農民であり、彼等は自分の暮らしを守る事も忘れてはいなかった。決して正義を求めてだけ立ち上がったわけではなかった。でも人間の理性と感情は、そんなにきっぱりとわかりやすくは、分かれない。どこまでが自分達のためで、どこまでが理不尽への怒りのためだなんて、線を引く事ができる人は、現在に至るまで、恐らく一人もいないだろう。 時を経て、出来事のどろどろした部分が濾過されて歴史の中に沈殿する。そして後に、奇跡的に成された美談の部分のみが濁りのない上澄み液として残る。世に伝えられる歴史の正体とは、案外そんなものなのかもしれない。 der="0"> お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
May 6, 2018 07:04:08 PM
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