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カテゴリ:海外のミステリー&ファンタジー小説
さあみなさん、長い冬休みがやってきましたね。予定はお決まりですか?私は海外に行かずに日本で仕事します。読書もしたいです。
さて、こちらは今年出逢った作家の作品です。ドイツのミステリーにはまっていくきっかけになりました。 コリーニ事件 Der Fall Collini フェルディナント・フォン・シーラッハ イタリア移民の老人が富豪の老人を後ろから銃で撃った。“後ろから撃った”という状況を考えれば、被告側に「偶然」や「衝動的な意思に駆られて」といった情状酌量の余地はない。検察側の弁護人は名だたる事件を勝ってきたやり手の弁護士。一方被告側の弁護人は国選弁護人として初めて法廷に立つ若手のライネン。更に被告側の弁護士ライネンは、孫を通じて原告を以前からよく知っていて、彼を殺した相手を弁護しづらいという個人的な事情もある。被告側に不利な状況をこれでもか、これでもか、と積み上げていく。さあ、絶体絶命の被告側が、絶対的優位に立つ原告側に対してどう戦うのか? 普通の法廷ドラマであれば、そうしたテーマが浮かび上がるし、最も面白い定番の展開だ。いや、本作でもこのテーマと展開に沿っている。だが、その上に、これまで明かされなかった被告側の動機に、ドイツならではの事情と、実際にある法律上の歪みを絡めて、個人対個人の問題を、ドイツ全体の問題に押し上げてしまった。 ラスト近くに、ライネンが相対する弁護士に「君は社会を信じ、私は法を信じた」と言われるシーンがある。本来ならば、法は人、すなわち人が安心して生きる社会を守るためにあるはずだ。それなのに、両者の乖離が起きてしまっていることが問題であり、だからこそ裁判の決着はこれしかなかったのだろう。法を信じる側、社会を信じる側、どちらが勝っても痛みが残るからだ。 作者自身が少しも感情の揺れを見せず―作者の出生を後で読めば、それも一種の驚きであるのだが―いかにも刑事弁護士らしい簡潔な描写を重ねて、読者の心を揺り動かすパワーを持った作品である。 こうした作品を、これまでの歴史を踏まえて出版できる環境があること、この本の出版を受けて激する国家でないことなどから考えても、ドイツという国は、日本よりはるかに大人である。 【1000円以上送料無料】コリーニ事件/フェルディナント・フォン・シーラッハ/酒寄進一【RCP】オンライン書店 BOOKFAN お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
August 30, 2023 06:07:19 AM
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