映画・海外ドラマ・本　ひとこと言いた～い

今日あたりは昼は暖かかったですね。小保方さんの会見は「200回やった」と言うならその結果を見せてくれればいいのに、と思いました。

今日はちょっと童話風のアレンジがされたミステリーを紹介します。


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狼の王子
Darling Jim
クリスチャン・モルク

　ダブリンの北にある小さな町マラハイドで、とある家から三人の女性の遺体が発見される。一人は老齢の女性で二人はその女性の姪だった。郵便配達員によって発見されるまで、家は完全な密室。つまり肉親同士である彼女達は、互いに殺し合ったということになる。なぜこのような事が起きたのか？

　第一発見者とは別の郵便配達員ナイルは、殺された女性の一人フィオナが書いた日記を配達不能郵便の中に偶然見つける。好奇心が勝ったナイルは、アイルランドでシャナヒーと呼ばれる語り部・ジムがキャッスルタウンベアという田舎町の女性教師・フィオナの前に現れてからの出来事が書かれている日記にすっかり魅せられてゆく。この日記が語りかける口調で描かれているため、読者もその先の悲劇を知っているにも関わらず、どんどん引き込まれる。

　本作は、語り部・ジムが行く先々で語る寓話がタイトルになっている。中世、優秀な弟を妬んだ兄が彼を殺して、父の死後王となる。しかし狼に姿を変えた後に、彼の正体を知りながら愛する王女と出逢う。さて、狼は己の獣性に従い王女を殺すか、それとも愛を選ぶのか？気になる所で寓話は終わっている。

　郵便配達員ナイルが‘一応’探偵役である。‘一応’とわざわざつけるのは、ミステリファンが通常予想するであろう、快刀乱麻を断つが如き活躍をしないからだ。とはいえ、一面識もない事件現場キャッスルタウンベアを訪れるという大胆な行動はしているが、これも読者の代わりに物語の中に入っていき、様々な物事を見聞きするのみの役割といった感じだ。

　日記という確かな証人がいる故の消極的探偵役かと思っていたが、日記の中に、死体として発見されなかった第三の人物が登場する。こうなると事件が根底から覆される。生き残ったのは誰なのか？日記は真実だけを語っているのか？起こってしまった事件を手記によって後追いして「つまりはこういう事だったんだな」そう思っていた物語が、結末なしに終わってしまった『狼の王子』の内容とリンクしてクライマックスに突入する。次々予想を裏切っていく後半の展開が特に巧みだった。

　著者がアメリカで映画製作に携わっていた著者が‘老齢の女性とその親戚らしき女性の遺体が発見された’という事実にインスパイアされたデビュー作。