映画・海外ドラマ・本　ひとこと言いた～い

みなさん、こんばんは。今日も暑かった～。35度とか普通ですものね。どうしたんだ今の日本。高校球児はよく頑張っているなぁ。

さて、今日は夫亡き後妻が引き継いで完成させた小説を紹介します。

タイタス・アウェイクス
Titus　Awakes
マーヴィン・ピーク

犬だけをお供に連れ、住み慣れた城を離れて彷徨する伯爵家当主タイタス。本書では彼が城を出た所から始まっているので、先の三部作を読まないと、一見恵まれた境遇にいる彼がなぜそこから離れる決意をしたかが理解できないはずだ。自分が見捨てられた火打ちの塔の死の梟だと信じるようになった彼の父親は梟の群れに加わって食べられてしまうし、聡明な母親は家族には一切関心を示さずに多数の猫や鳥たちと共に寝室に閉じこもっている。このようないっぷう変わった両親に育てられたからなのか、


「彼は耳の聞こえぬ盲人であり、目の見えぬ聾者だった。」


　という表現のごとく、タイタスは他人と普通に接することができない。身分も財産も全て捨ててまっさらの状態になった悩める主人公、妊娠させた女性を途中で捨てたりしているのになぜか女性によくモテる。


「きみのところにしばらくやっかいになりたいと思うけれど、ぼくの性質からして、そのうちまた出ていく。これまでに、償いきれないほど人を傷つけてきたし、きみにはわがままだと思われるだろうけれど、出てゆくときには、きっときみのことも傷つける。そのときには自分も同じだけ傷つくけど」



　これは旅先で出会った女性にタイタスが語りかける台詞である。「あんたはジゴロか！」と伯爵さまらしからぬ台詞にイラついてしまった。にも関わらず接する女性が優しいのは、本作から女性作家になったことと関係があるのか、もともと彷徨の物語である本作で、女性に癒しのイメージを託したのか。
　
　タイタスに知恵を授ける老人、革命家を気どる若者、タイタスが世話をした病人夫妻、タイタスを攫ってきた男達。城を出てからの彼の旅はあらゆる人生のカタログを見て歩くようなものだ。初めて味わう感情や人々の想いをかみしめて、タイタスはようやく自分が求めていたものを見つけ出す。王道路線のビルドゥングスロマン。

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