映画・海外ドラマ・本　ひとこと言いた～い

みなさん、こんにちは。38度の熱を出して寝込んでいました。蚊に刺されたことからデング熱か？とすわ恐怖にかられたものですが体の節々が痛くないのでそうではなさそうです。

さて、今回はちょっと前に話題になったスコットランド出身の王族女性がヒロインのミステリを紹介します。

貧乏お嬢さま、メイドになる 英国王妃の事件ファイル 1 コージーブックス
Her Royal Spyness
リース・ボウエン

　生前はバグパイプが吹けなかった（スコットランド出身なのに！）にもかかわらずバグパイプを吹く姿で幽霊となって現れる祖父、銃が得意ではなかったのにギャンブルで身を持ち崩した揚句に銃で自殺した父、元女優で恋多き母という、なかなか面白い家系に育った公爵令嬢ジョージアナことジョージーの悩みは、義姉が少しもイケてないルーマニアの王子との結婚を勧めることだ。この時代や身分には珍しく「愛した人と結婚したい」と思っているジョージ―は、言葉巧みに姉の勧めをかわしてロンドンの別邸へとやってくる。ところが生計の手段を持っていない貴族には、世間の風は冷たい。ましてや世界中を襲った大恐慌の余波が残っている時代であり、強みは王族との繋がりという血筋だけという彼女においそれと求婚者が現れるはずもない。そんな時、奔放でデザイナーをしている学友の助けを借りて、メイド業を始める。

　シリーズ第一弾のお約束通り、当人あるいは関係者が事件に巻き込まれて「解決しなければ自分が危ない」という強烈な動機が登場する。また、「第一作でこんなに？」と思うくらい命も狙われており、彼女があれこれと動きまわるエクスキューズが成り立つ。
　ただし、事件と始めたばかりのメイド業との関連は出てくるが、たまたま見つけたもの、目撃したものとの関連で、貴族がメイドをしているからこその利点がさほどある訳ではない。メイドと事件との結びつきは、アガサ賞を受賞しているという第五作あたりでうまく作用しているのだろう。

　妹には優しいが妻には頭が上がらない異母兄ビンキ―。。王族の学友としては正反対のキャラクターであるベリンダ。ジョージ―と同じく貧乏貴族でハンサムなダーシーは、ジェイン・オースティンの『高慢と偏見』の相手役と同じ名前だ。そういえば義姉に辛くあたられる妹というシチュエーションもまた、オースティンの『分別と多感』を想わせる。ダ―シ―は彼女を誘惑しようと第一作からかなり積極的に迫っているが、過去もまだ明かされていないし、シリーズのレギュラーとなりそうだ。母方の祖父は元警察官で、こちらは警察関係の情報を得るのに役立ちそう。この脇役達に加えて、ジョージ―に厄介事を依頼しそうな存在であるのが、実在の王族であるメアリ王妃。“王冠を賭けた恋”のエドワード8世、『英国王のスピーチ』のジョージ6世の母親であり、特に息子の恋愛に神経をとがらせている。史実とのすり合わせがどうなっていくかもみどころだ。

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