映画・海外ドラマ・本　ひとこと言いた～い

みなさん、こんにちは。阪神優勝しましたね。昨日『花子とアン』のスピンオフをやっていたのですが、
あまり興味を惹かれませんでした。バラエティっぽくて。

さて、今回は不思議な雰囲気の残るイギリスでのミステリー小説を紹介します。
まだ第一作しか翻訳されていませんが、シリーズなので今後も出版されるといいなぁ。

丘　上下
The Various Haunts of Men
／スーザン・ヒル／加藤洋子

『ぼくはお城の王様だ』のような本当に容赦ない小説と、『雪のかなたに』のようなほのぼの心温まる小説の両極端を書けるスーザン・ヒルが2004年から書き始めたクライム・ノベルシリーズ第一弾。

　主人公はサイモン・セレイラ―という警部で、医者一族の中で一人だけ警官を選んだという変わり種。とびきりのハンサムで出逢った女性皆が彼の虜になるが、彼自身は女性がその気になるとスッと引いてしまう。また画家として書いた絵は毎回完売するほどの腕前で、10歳年の離れた恋人とはつかず離れず。血のつながった姉さえも、彼をつかめていない。あまりにも私生活がカッコ悪すぎるヴァランダーや特捜部Qのカール・マーク警部とは対極の描かれ方をされているのは、作者が女性だからか。

　三人称小説で綴られるが、主人公たるサイモンの内面描写や内面を窺わせる記述は殆どなく、彼に一目ぼれしたバツイチの巡査部長フレヤの視点から描かれるため、彼の思考パターンは全く読めない。フレヤのサイモンに対する一喜一憂の方が気になって、恋バナを覗き見しているような気分になってしまった。だって本当にフレヤが可愛らしいんです。彼が美形の女性（姉）と一緒にいたといっては心を乱し、彼の部屋に誘われて話をしたらその時間が楽しくて「やっぱりこの気持ちを抑えておくのはやめよう」と思ったり。誰もがこの恋がうまくいくといいなぁと思いたくなるような書き方をしてるんですね。しかし結局はスーザン・ヒルの容赦なさが出ている展開を見せていて、ああやっぱりと思いました。もしこの本で最初にスーザン・ヒルを知った人が読んだら、この展開にはかなり驚くことでしょう。

　さて、メインの話は古代の立石と霧深い丘「ザ・ヒル」で有名な街で連続して人がいなくなってしまう事件。恋に溺れて捜査を疎かにするわけではないフレヤが、視点も鋭く同僚刑事たちと事件を追っていく。サイモンが先頭に立って指揮を取るとか、ひらめきを見せるようなリーダーシップを発揮するような所はなく、彼はあくまで刑事達を指導する上司のスタンスを崩さない。誰のものともつかないモノローグが挿入されて、途中でその身元も明かされるので、犯人を探していく面白さというより、いつ事実が明らかになるか、その瞬間を待つ緊張感を楽しみながら読んだ。


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