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November 27, 2014
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皆さん、タイトルに引かないで下さいね。


狂える者の書 (パラディスの秘録)
The Book of the Mad
タニス・リー


小説家志望の方によくするアドバイスの一つとして「早い段階で読者の定点を作ってあげること」というのがある。
1.メインの登場人物とどうでもいいスタンスのそれとを分けて書くこと。
2.物語の時代、舞台をはっきりさせること。
3.そしてもう一つ、物語のスタンダードをはっきりさせること。つまり、何をすることが普通で、何をすることが普通でないのか。

 大体この3つが序盤ではっきりすれば、読者は安心して定点に立ち、そこから物語世界に入ることが出来る。逆にこの3つがなかなか分からない場合―特にその著者の作品が初見の場合―は、読者の我慢が切れて読んでもらえないこともある。

 タニス・リーの本作品がこの3つの原則のうち2つを外しているのは、勿論確信犯である。

パラディ、パラディス、パラダイス。全て楽園の意味を持つその場所は、狂気と正気の狭間にいる人達がいる。だから楽園という意味は逆説なのか、と問われればそうとは言えない。なぜならば、街の人々が全て狂気であれば、誰もがそれを苦痛とは思わないからである。ここでのスタンダードは「正気」ではなく「狂気」だからだ。苦痛と感じるのは、狂える楽園で正気を保っている者だけだ。パラダイスに住むフェリオンとスマラの兄妹のように。だが、そんな兄妹への同情は、第一章のラストで気持ち良く裏切られる。

 パラディの女画家レオカディアもまた、正気を保っているがために、楽園を楽園と感じられない者の一人だ。彼女の世界は兄妹の住むそれと違っていて、全てが狂気に満ちているわけではない。だが、ある出来事がきっかけで、「多数の狂気Vs少数の正気」という兄妹と同じシチュエーションに置かれる。名家出身である彼女が、同性の恋人を殺した容疑に問われ、精神病院に送りこまれてしまったからである。さて、彼女は緩やかに狂気に向かうのか。それとも正気を保つ戦いを続けるのか。

 パラディスの裕福な家庭に生まれた十五歳の少女・イルドの物語は一番分かりやすい。三つの楽園の中で最も現代社会に近いスタンダードを持つ社会に生き、年齢も若いので複雑さを持たない。ただ一つ、夢の中で悩まされた性衝動を抑えられなかった事が、彼女を本来接するはずではなかった狂気の世界に放り込む。ところが先の二者と異なるのは、狂気でいた方がイルドにとっては幸せだということだ。

 こうして読者のスタンダードをぐしゃぐしゃに掻きまわしたタニス・リーは、ちらちらと共通の小道具を見せて、これらの三つの世界の時間軸や、三者の関係性を探ろうとする読者を迷路に導く。さあ、こうなると大変だ。作中に登場するペンギン・ジン(歌まである!)を飲む度に酔いが回っていくように、読む度にさっきまで信じていたことが「本当にそれは私が思っていた通りなのだろうか?」という疑いに覆われて、いつまでも思いきれない。「読み終わった」という満足感はなく、どこかふらふらと千鳥足で「これで良かったのだろうか」とまたこの本に戻って来たくなる。悪酔いをしない自信がある読み手に是非お勧めしたい。
 


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最終更新日  November 27, 2014 12:05:01 AM
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