映画・海外ドラマ・本　ひとこと言いた～い

みなさん、こんばんは。雨が降るはずだったのに昨日は降らず、またもや熱帯夜です。
こんな夜にはホラーものを読んでみませんか？


霊応ゲーム
The Wishing Game
パトリック・レドモンド

　1999年、イギリス。記者を訪ねてきたみすぼらしい男が話し始めるのは、1954年、ノーフォーク州の全寮制パブリック・スクール、カークストン・アベイ校の生徒達のことだった。

　14歳の生徒ジョナサンは、同級生ばかりか教師にもいじめられ、つらい日々を送っていた。だが、そんな彼に新しい友人リチャードができた。クラスを支配するグループのボス、ジェームズは、一匹狼的なリチャードを仲間にしたいと願っていたが、自分ではなくジョナサンと親しくなったためジョナサンに対して取り巻きを使って苛める。するとグループのメンバーが大怪我を負ったり、事故死する事件が立て続けに起きるようになる。

　公立校から転校してきたばかりで気が弱くて優しいジョナサン、裕福な家の出で成績もよくイケ面で、先生に対しても不敵な態度を取るリチャード、彼が自分になびかないのが面白くないためジョナサンにますます辛くあたるジェームズとその取り巻き、突然割って入ったリチャードが気にいらないジョナサンの親友ニコラス。渦中にいる苛められっ子の性別を置き換えたら、恋愛漫画で何度となく使われているシチュエーションで、女性読者は一度は読んだことのある話だろう。そのため、狭い環境で感情がぶつかり合い、次第にドロドロしていくこの先の展開もすんなりと受け入れられるはずだ。むしろ越えるべきハードルは別のところか。

　リチャードとジョナサンが肩を抱いたりふざけあったりしている場面を見て複雑な思いに駆られるニコラスやジェームズに、「その気持ちが恋なんだって、誰か教えてあげて！」とじれじれ。まあ、彼等がこう思うほど、一旦ジョナサンを気に入った後のリチャードの執着ぶりが半端ではないのだ。「僕の前では泣いてもいい」と言ったり、肩に腕を回すわ、頬をなでるわ、一緒にベッドで寝て腕枕するわ、もうベタベタ。出版された頃BLはまだ一般的ではなかったはずだが、腐女子が嵌るポイントをも見事に押さえている。二人で薔薇を食べ始めたら、間違いなく萩尾望都の某漫画のキャラだ。

　さて、少年たちに萌えている間にも話はどんどん進み、読者は、大人達も巻き込んだ愛憎劇にあれこれと心を痛めつつ、ストーリーの底辺を支える「話の語り手は誰か」「一体何が起こったのか。またその原因は？」という二つの謎の中心へとぐいぐい引っ張られていく。本当の悪は人間なのか、それとも…？刺で傷を負っても美しい薔薇を手折りたいそこの貴方、是非ご一読を。


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