映画・海外ドラマ・本　ひとこと言いた～い

みなさん、こんばんは。高校野球も終わりましたね。
夏休みも残すところあと少し。昨日はちょっと雨が降りましたが相変わらず蒸し暑かったですね。
こちらはイギリスで古くから知られているマギノビオン物語の現代版です。


マビノギオン物語　3翼あるものたちの女王
The Song of Liannon
エヴァンジェリン・ウォルトン／田村美佐子

第二巻で愛する妹ブランウェンをはじめ悉く一族を失ったスィ―ルの息子マナウィダンが、ダヴェドの大公プウィスの息子プラデリに｢共に故郷に来て寡婦となった母フリアノンと結婚してくれないか｣と頼まれ、めでたく結ばれるまでの経緯と、マナウィダンが異世界に囚われた妻と義理の息子を追ってゆく二つの話に大きく分かれる。
　前者の話ではプウィスと異世界を捨て人間界で暮らすことに決めたフリアノンが長らく子供に恵まれなかった理由と、にも関わらず息子が生まれた経緯について明かされる。子供に恵まれなかった経緯については、第一巻で案じたようにやはり｢花嫁を奪われた神｣が関わっている。この恨みは二つ目の妻と息子の失踪にも絡んでいて、追いかけていったマナウィダンが｢いいかげん許してはどうか｣みたいなことを言うのだが、神々は｢人間にとっては何十年でも神々にとっては辱めを受けてから3日くらいしか経っていない｣とのたまい、マナウィダンと読者を驚かせる。

　　第一巻アンヌウヴンの貴公子 (マビノギオン物語1)及び第二巻スィールの娘 (マビノギオン物語2)の伏線回収と戦後処理の回である本巻では、冒険譚はあるものの激しい戦闘場面はない。終息に向かって比較的穏やかな筋運びになっている。その代わりにややコメディ的要素が含まれている。例えば、国を追われたマナウィダン達が知らない土地で鞍・盾・靴を作って生計を立てるが、何をやっても器用なので職人達の恨みを買って逃げ回る場面、フリアノンとプラデリ、それぞれの伴侶がいなくなって為さぬ仲である他人同士が残された時に、プラデリの妻キグヴァ（とんでもなく料理が不得意）が｢このまま二人が戻ってこなければ、私はお父様と結ばれなければならないのかしら？｣とやや暴走気味に妄想する場面など、特に第二話にその傾向が顕著である。

　長年子が出来ない夫婦の間に子供が出来る経緯については、ギリシア神話のゼウスが人妻やら若い乙女を見染めた時によく使ったトリックが使われており、また、第二話の異世界に行った息子と妻を追いかける場面は、オルフェウスの黄泉への旅を思い起こさせる。どこかからギリシャ神話のエッセンスが紛れこんだのだろうか。



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