映画・海外ドラマ・本　ひとこと言いた～い

みなさん、こんばんは。台風は低気圧に変わりましたが、一気に涼しくなりましたね。寝苦しい夜でなくなったため、ネ過ごしてしまわないようにしましょう。

さてこちらはドイツの人気ミステリの第一作目です。

悪女は自殺しない
Eine Unbeliebte Frau
ネレ・ノイハウス

　ドイツ警察のオリヴァー＆ピアのコンビ結成の瞬間が描かれるシリーズ第一作が、第三作「深い疵」第四作「白雪姫には死んでもらう」に続き、ついに日本で刊行された。

　政界進出を狙っていた上級検事が散弾銃を口にくわえて自殺する。時を同じくして展望タワーで若い女性の死体が発見される。コンビは後者の事件を担当するが、被害者は誰からもいい評判をきかない「いけすかない女（原題）」だった。

　既に刊行された著者の作品に比べれば確かに地味で、いかにもありがちな設定だが、一見豪華だが内実は裏腹というセレブの現実や、誰が容疑者になってもおかしくないようなキャラクターを多数投入したり、プライベートの悩みを挟んだりと、基本をきっちりおさえた優等生的作品で、本作は最初自費出版されたが、商業出版レベルに十分達している。但し、気になる点もあった。

　両者の事件はある事実が提示された途端に繋がるのだが、この繋がり方がえらくあっさりしている。もうちょっと練れていれば「もしかしたら関係があるのじゃないか」「いやどうなんだろう」と刑事達が捜査しながら迷う場面や小道具を挿入したかもしれないが、第一作とあって、いろんな所がストレートだ。
　また、彼女の事件の容疑者を追う裏で、結構深刻な事件が進行しているが、その事に対して刑事が積極的に動く様子が希薄である。そちらの方がタイムリミットがあるため、本筋の捜査と合わせて追えると、かなりサスペンス度が上がるだろう。

　さて、シリーズの肝となるコンビ二人についても述べておく。
「白雪姫には死んでもらう」で夫と離婚を果たした女性刑事ピアは、本作では夫とは別居しているが、七年間の休職を終えて仕事に復帰したばかりでやる気に溢れている。一方、事件の度に女性絡みの悩みを抱える彼女の上司オリヴァーは美しくやり手の妻にぞっこんで、かつての恋人と出会ったこともつつみ隠さず彼女に話し「貞操が守れるかわからないぞ」と軽口を叩く。後の展開を知るものとしては、余裕綽々の彼が何とも痛ましい。刑事としては優秀でも、身近な人間には目が曇るのか。というように、一作目にして女性主人公が奮闘し、男性主人公は女性絡みのポカをやる、というスタイルが既に確立している。ただ解説でも指摘されている通り、今回はオリヴァー側の露出が多く、ピアの見せ場があまりないのが残念だ。読者の反応を窺って関係を考えていくつもりだったのかもしれない。


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