映画・海外ドラマ・本　ひとこと言いた～い

みなさん、こんばんは。再来年の大河ドラマが決まりましたね。柴咲コウさん演じるヒロインが主役になっている歴史小説をさっそく紹介します。

女にこそあれ次郎法師
梓沢要

徳川四天王の一人、井伊直政。子孫に大老井伊直弼を生む彼の人生は、波乱含みであった。祖父直盛は今川義元に仕えており、桶狭間の戦いで戦死。父直親は、直政が生まれた翌年に謀反の疑いを受けて、義元の息子氏真に誅殺される。この後大抵の歴史書には、彼が不遇な少年時代を送り、14歳の時にようやく徳川家康に見いだされた事しか書かれていない。だが戦国から安土桃山に至るこの時代、まだ絶対の権力者は存在しない。庇護者たる父を失った少年が、たった一人で果たして生き抜けたのか？

　答えは否である。表舞台にはあまり登場しないが、彼を元服まで庇護し、育てあげた一人の女性がいた。本編の主人公となる女性、次郎法師直虎である。

　女性なのになぜ男性名を名乗ったのか？ここに至るまでには、十三歳の彼女の、辛い選択があったのだ。

　磐田市出身の著者は、彼女-祐の幼少時から筆を起こし、その死までを綴る。直盛の一人娘として生まれた彼女は、「男であれば」という周囲の噂に心を痛めながらも、許嫁と決められた直親との結婚を夢見る、無邪気な少女だった。そんな彼女に、戦国時代の過酷な現実が襲いかかる。いくら男名前を使ったからといって、彼女が弓を振るい剣を交える事は在り得ない。あくまでも彼女自身のやり方で、戦国を戦う。とはいっても、彼女は木石ではない。故あって結ばれなかった直親との間に流れる複雑な思いに身を焦がし、選択を時には悔いる。それでも最終的には家の存続のため自らの思いを封じ込め、獅子身中の虫とも手を結ぶ。

　彼女と同じように、後継者の資格を備えながら僧籍に身を置いた叔父。表舞台に出る事のない二人が、無私の志で手を組みながら家というものを支えていく姿に感動を覚えた。

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