映画・海外ドラマ・本　ひとこと言いた～い

　みなさん、こんばんは。国会の様子から目が離せません。この間負けたのはアメリカだから、例えば別の国なら勝てるとでも思ってるのでしょうか。国会で法案を通そうが通すまいが着々と準備だけしているなんてずるいです。
もし戦争が始まる頃には私はもう年老いていて戦闘要員にはなれないでしょうが、ただでさえ少子化なのに戦地に赴くのはこれから生まれる子たちや今の子供たちになるのかもしれません。
戦地に例え赴かなくても日本人一人が殺されたら、日本国民は我慢せずにいられるのか。
絶対やり返したいとかそういう思いでいっぱいになるに違いない。卑怯だと言われようとも戦闘地域には行って欲しくない。

　アイルランドもまた戦争で傷ついた国です。


アイルランド・ストーリーズ
Ireland Stories
ウィリアム・トレヴァー

　ある女性が危篤であることと、病院の名前だけ書かれた電報が届く。イタリアで暮らしていた男は電報を見るやすぐさま彼女がいる故郷アイルランドに向かう。旅の途中で頭を過るのは、9歳年上の女性ジョセフィンが彼の屋敷で働いていた時の幸せな、そして最後は悲劇に終わる記憶だった。

　『聖人たち』をはじめとする短編には、現実と過去が交錯して描かれるタイプが多く収録されており、その中には当然イギリス親和派Vsアイルランド独立派に分かれ激しい抗争が繰り広げられたアイルランドの苦い歴史が絡む。『聖人たち』の主人公の父も闘争の犠牲になり、ジョセフィンも一家を襲った悲劇の記憶と現実の北アイルランド紛争の二つの争いの記憶から逃れられない。そして、40年間故郷から離れていた主人公もまた、犠牲者の一人だ。

　内戦であれ海外に向けての戦争であれ、戦争をするということは、こういうことだ。目に見える傷より目に見えない傷の方が多く、後者はより長く人や国を苛み続ける。事によれば傷は個人に留まらず、次世代にも余波を残す。『アトラクタ』のヒロインがそうだ。

　両親を亡くしたアトラクタは叔母のもとで育ち、教師になる。幼少時、町中で誰よりも親切にしてくれる男性とその家政婦に彼女は好意を抱くが、ある男性のおせっかい―彼にすれば善意の行動―によって、彼等と両親の死との関係を知る。定石通りならば彼女は秘密を隠していた彼等を糾弾し『聖人たち』の主人公のように深く暗い闇に陥るはずだが、そうはならない。アトラクタはある日生徒の前で「怪物がいつまでも怪物であり続けるわけではない」ことを切々と訴える。ところがアトラクタが伝えようとしたことは教科書の内容しか馴染みのない子供達には届かない。

　『アトラクタ』は融和と対立に揺れたアイルランドの辿る道と採るべき未来をぎゅっと凝縮したかのような贅沢な短編だ。更に訳者による巻末解説を読むと、この国が長く苦しんできた傷を理解する助けとなる。そして改めて、どんな怪物が現れても挫けない不屈の信念や優しさを持ったアイルランドの人々の姿をありありと心に浮かべることが出来るのだ。


最初期の短篇「ミス・スミス」からO・ヘンリー賞受賞作「女洋裁師の子供」まで12編を収録。


【楽天ブックスならいつでも送料無料】アイルランド・ストーリーズ [ ウィリアム・トレヴァ ]楽天ブックス