映画・海外ドラマ・本　ひとこと言いた～い

昔アイルランドに旅したことがあるのですが、その時のガイドさんはローズマリー・サトクリフの事を知りませんでした。アイルランドの人物たちが主人公の作品も結構書いているのに。
こちらはローマ三部作と言われるシリーズの第一作になります。


第九軍団のワシ
The Eagle

出演
ジェイミー・ベル　チャニング・テイタム　ドナルド・サザーランド
監督
ケヴィン・マクドナルド

　西暦120年、ブリタニアに侵攻したローマ最強と称される第九軍団が、“黄金のワシ”と共に姿を消す。20年後、指揮官の息子マーカスはブリテン島のとりでに隊長として赴任するが、けがで従軍を断念。療養の地で、奴隷戦士のエスカと出会う。ある日、島の北端の神殿に“ワシ”があると知ったマーカスは、エスカを伴い北へと向かい…。

　原作との違いとして以下の内容がある。
1、マーカスが官吏出身の伯父アクィラとはもともとウマが合わなかったという前段階。
2、イケニ族だったが、叔母からはローマ風のカミラという名で呼ばれていた隣家に住むコティアという少女
3、探しに行く時既にエスカは奴隷ではなくこの旅には自ら志願した

　この中で最もストーリーの展開に影響を与えるのは3の変更である。原作では既に奴隷ではなく友人という立場で壁の外へ向かっているので、エスカを連れていくと伯父に告げた時に「あいつはブリトン族だ。一人になったらお前の喉をかき切るぞHe may not be from the north of the wall, but he's a Briton, and he will slit your throat the minute you're alone.」とマーカスが警告されることもない。また、アザラシ族に捕まった時にエスカが言いつくろったために奴隷と主人の立場が入れ替わるが、その際映画ではエスカが「そのまま裏切るのか？」と思わせるような言動を取る。一方原作では、賊に囚われた時にエスカがどう振る舞うのか観客を迷わせる要素はない。一度揺らぎ、再び強く結ばれる二人の友情が、映画版の方がより強調された形になった。

　マーカスの本名はマーカス・アクィラで『アクィラ』とは鷹を意味する。父親の姓も同じなのでつまり「鷹を取り戻す」ことはローマの象徴を取り戻す事に留まらず、マーカスの中で「失われた父」と共に「その父と共に在った幸せな自分」「勇気を持って人生に立ち向かえる自分」を取り戻すことでもある。そう考えると「鷹＝Eagle」(映画原題)
はマーカスの成長を描く作品とも言える。

　作中で襲ってきた賊の中に子供がいた。エスカはためらって逃がしてしまうが、その子供の背をマーカスのナイフが襲う。「次はためらうな」と言うが何だか自衛隊の海外派遣を想像した。襲わ
れたら専守防衛で相手を殺すというのなら、少年と言われるような兵士を相手にすることも増えるはずだ。70年間戦争も人を殺す事もしてこなかった軍隊の一人一人が、マーカスのように果たして割り切ることができるのか。


エスカ役は『リトル・ダンサー』でバレリーナになりたい少年を演じてデビューしたジェイミー・ベル。この映画に出るまで一度も馬に乗ったことがなかったが、チャニング・テイタム扮するマーカスと共に、広大なイギリスの野を駆け抜ける。

映画「第九軍団のワシ」
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