映画・海外ドラマ・本　ひとこと言いた～い

みなさん、こんばんは。いやー今週はずっと天気が良かったですね。
なでしこ負けてしまいましたね。
今日はミステリ短編集を紹介します。

列車に御用心
Beware of the Trains
エドマンド・クリスピン

ある時、なんの変哲もない田舎の駅で、突如列車が止まります。

　
「列車はこの駅で停まるやいなや、どうしたわけか出発するのをいやがるそぶりを見せていた。発車合図の汽笛が自信たっぷりにひと声あげても、列車は動こうとしないので、汽笛が機嫌を損ねて黙り込んだ。気を取り直して、もうひと声あげてみせたがやっぱり動いてくれない。こんどこそはと、拒否を許さぬ叫びにも似た音を響かせた。」



えっ、列車が意思を持つ？すてファン・グラビンスキの『動きの悪魔』みたいに？

　いえいえ、違います。単に車掌がいなかっただけです。ホラーではありません。面白い書き方しますね、エドマンド・クリスピン。彼が生んだ探偵ジャーヴァス・フェンが偶然この列車に乗り合わせていたことから、凶悪犯を追ってやってきたロンドン警視庁のハンブルビ―警部と共に、車掌失踪事件に取り組みます。

　ジャーヴァス・フェンはオックスフォード大学のセント・クリストファーズ・カレッジの英文学の教授です。本編には初登場作が掲載されていないため、ここでは既に数々の実績を挙げた探偵として警察へもノーチェックで入れますし、捜査の現場にも行けます。ですが刑事ではないので、基本はハンブルビ―が持ち込む事件を聞いただけで解決していく安楽椅子探偵タイプに属します。また、ここも刑事ではない所以ですが、必ずしも犯人を捕まえることに重点を置きません。取り扱われる謎は、暗号、密室殺人、アリバイ解読など様々です。

　さて、本編は「クイーンの定員」に選ばれていますが、クリスピンは、ジョン・ディクスン・カーの大ファンです。そのため自作の中に

「ギデオン・フェル博士はかつて『三つの棺』に関係した、密室の謎についての実にすばらしい講義をされた。だがひとつだけ、博士が感情に入れなかった項目があったんだ」


と、フェル博士を登場させています。いいですねぇ、ファン愛がダダ漏れで。ところで、大柄で陽気なフェル博士と、皮肉屋のフェンは、果たして馬が合うのでしょうか？それはまた別の話。


収録作は以下の通り
「列車に御用心Beware of the Trains」
「苦悩するハンブルビーHumbleby Agonistes」
「エドガー・フォーリーの水難The Drowning of Edgar Foley」
「人生に涙ありLacrimae Rerum」
「門にいた人々Within the Gates」
「三人の親族Abhorred Shears」「小さな部屋The Little Room」
「高速発射Express Delivery」
「ペンキ缶A Pot of Paint」
「すばしこい茶色の狐The Quick Brown Fox」
「喪には黒Black for a Funeral」
「窓の名前The Name of the Window」
「金の純度The Golden Mean」
「ここではないどこかでOtherwhere」
「決め手The Evidence for the Crown」
「デッドロックDeadlock」


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