映画・海外ドラマ・本　ひとこと言いた～い

みなさん、おはようございます。
4月1日から朝日新聞で『我輩は猫である』が連載されますね。
その中にも登場するミステリを紹介します。


ウジェーヌ・ヴァルモンの勝利
The Triumphs of Eugene Valmont
ロバート・バー

　名探偵には語り手がつきものだ。シャーロックにはジョン・ワトソン、エルキュール・ポアロにはヘイスティングス。しかし本編は探偵自らが語る。ほほぅ、珍しい。さては連戦連勝の名探偵なのか。ところが、「我輩」と自らを呼ぶウジェーヌ・ヴァルモンは、のっけから「ダイヤモンドのネックレスの謎The Mystery of the Five Hundred Diamonds」事件でミスをしてフランス警察をクビになる。あれ、名探偵ではなかったのか？「フランスで刑事局長までつとめたのだから自分は優秀だ！」と自信満々のウジェーヌはスコットランド・ヤードに応募するが、推薦状も証明書もない彼をヤードが採用するはずもない。かくて本人すこぶる不満ながら、ロンドンで私立探偵を開業する。

　ウジェーヌは、イギリス警察のやり方が何かにつけて気に入らず、事あるごとに彼等への不満を語る。例えばよくテレビの刑事もののシーンに登場する、逮捕手続きで「君の発言はすべて証拠として採用されることを忘れないように」と刑事が宣言する場面が登場するが「悪党に対してイギリスの法律は自分に不利になるようなことを言うなと勧めるなんて、なんて連中だ！」と怒る。また、なかなか白状しない悪人のためにアパートを改造して独房をこしらえ、「正義のためなら強引な方法を取ることもやむなし」と考えている。アナーキストの暗殺計画を止めるウジェーヌだが、第三者から見れば彼の方がよっぽどアナーキー。だが、赤川作品の大貫警部みたいにまるっきりの迷惑探偵かと思いきや、鋭い勘を働かせている事件もあり、読めないキャラクターだ。そんな彼を訪れる依頼人もユニークな人物が多く、中でも「幽霊の足音The Ghost with the Club-Foot」に登場して、かに足（障害のひとつ）と名家に亡霊が出る確率について語る女性の件には爆笑。類は友を呼ぶのだろう。

収録作
「ダイヤモンドのネックレスの謎The Mystery of the Five Hundred Diamonds」
「シャム双生児の爆弾魔The Siamese Twin of a Bomb-Thrower」
「銀のスプーンの手がかりThe Clue of the Silver Spoons」
「チゼルリッグ卿の失われた遺産Lord Chizelrigg’s Missing Fortune」
「うっかり屋協同組合The Absent-Minded Coterie」
「幽霊の足音The Ghost with the Club-Foot」
「ワイオミング・エドの釈放The Liberation of Wyoming Ed」
「レディ・アリシアのエメラルドLady Alicia’s Emeralds」


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