映画・海外ドラマ・本　ひとこと言いた～い

みなさん、こんばんは。この間翻訳イベントに行ってきました。その時に翻訳者の酒寄さんが大絶賛していた作品です。

第三の願い
Wunschkrieg
カイ・マイヤー

　正直者が三つの願いを叶えてもらうストーリーは、昔話にもよく登場する。最初の願いは｢本当に願いが叶うのだろうか？｣と半信半疑なため、他人の手を借りずとも叶いそうなレベルを口にする。二番目の願いは、最初の願いが叶ったのを目の当たりにして、ちょっと大きく出てみる。しかしこの時｢願いが叶うことはそう良いことでもない｣と気付き、｢今までのことをチャラにしたい｣と願い出て、元の木阿弥に戻る。或いは、二番目の願いで思わぬ方向に向かった運命を元に戻し、そこそこ幸せなレベルに戻す。補正・修正が出来る三番目の願いが背後に控えているから、主人公は途方もない願いを素直に口にできるのだ。三という数字は、実に座りがいい。だがもし、三つ目の願いごとがある時突然効かなくなってしまったら?

　本作では、三つの願いをかなえてくれる魔人が、最後の願いを叶える力を失ったことから、被害にあった人々が結社〈第三の願い〉を作っている。カリフ率いる正規の軍隊と嵐の王は、魔人との戦いにおいて共闘していない。誰が誰を信じてよいのか分からず、疑心暗鬼に囚われている人間社会は、相変わらず混沌としている。そんな中で微笑ましいのは、絨毯の乗り手に対する忠誠心だ。冒頭でターリクが他人の絨毯に乗るシーンがある。急所を掴んでしまえば絨毯は乗り手を選べない。とはいっても好き嫌いはあるらしく、久しぶりにターリクと再会した彼の絨毯が嬉しそうな仕草?をする。人間は自分の身を守るために嘘をつき裏切るのに、絨毯のこの素直さときたらどうだろう。カイ・マイヤーは、今までにない表情豊かな絨毯を創造した。

　さて、そんな絨毯の可愛らしさに煽られて?主役兄弟の恋愛モードもヒートアップ。ターリクは危険な毒娘サバティアと燃え上がる恋に落ち、弟ジュニスも片恋の相手に遂に熱い思いをぶつける。ところでベッドシーンが激しいぞ君たち(恥)。世界の行方と兄弟、そして愛する人達の運命は、次作でいよいよ明らかに。



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