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June 8, 2016
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みなさん、こんばんは。みなさんは映画『太陽がいっぱい』を見たことがありますか?
原作は映画とはちょっと違っています。
興味を持った方はこちらをどうぞ。

贋作
パトリシア・ハイスミス
Ripley Under Ground

映画『太陽がいっぱい』は、南欧の太陽を見上げたリプリーが「太陽がいっぱいだ…」と呟いた矢先に刑事らしき二人が彼を訪れる、いわば勧善懲悪のラストシーンになっていた。「悪事は報われない」という結果は日本人にも受けたが、小説におけるリプリーはするりと捜査の網をくぐり抜けていた。

 本作は、前作が書かれてから15年が経過した設定だ。冒頭に登場するリプリーは、富豪の娘エロイーズと結婚し、家政婦までいる邸宅でお気に入りの絵画やワインに囲まれて暮らしている。ディッキー・グリーンリーフの遺産で買った株からの収入で、何不自由なく暮らしているのだから、おとなしくしていればいいものを、5年前に死んだ画家ダーワットを生きていると見せかけ、贋作事業を続ける仲間に加わっていた。ある時、裏で関わっている画廊「ダーワット商会」に疑いを持つ人物が現れる。以前ダーワットの絵を購入した男マーチソンが、それを贋作ではないかと言い出したのだ。


 『太陽がいっぱい』に続くリプリー成り済まし物語であり、「本物」と「偽物」を巡る物語でもある。リプリーは勿論「偽物肯定派」だ。フェルメールの贋作で知られるハン・ファン・メーヘレンが引き合いに出されるが、
『芸術家は自然に、努力しないで制作する。何かの力が彼の手を導くのだ。贋作者は苦闘する。だが成功すれば、それは正真正銘の偉業なのだ。』
というのが
彼のポリシーで、偽物は決して本物に劣らないと考えている。

 リプリーと合わせ鏡のように登場するのが、実際にダ―ワットの贋作を描いているバーナード・タフツだ。バーナードは生前のダ―ワットと交流があり、彼を尊敬している。贋作を知られて別れた恋人への未練もあり、今回の贋作騒動が起こった事で全てを明るみにしようと考える。ディッキーの従兄が訪ねてきたり、行き当たりばったりの行動がピンチを生んだり、「あちこちに出没する危機をリプリーがどうやって乗り越えるか」がサスペンスとしての読みどころだが、リプリーとバーナードという、異なる考えのぶつかり合いもテーマである。とはいっても、決して分かりあえない二人がどこに行きつくかは、大体想像の通りである。

 さて、あなたはこの結末を受け入れますか?


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最終更新日  June 8, 2016 12:01:42 AM
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