映画・海外ドラマ・本　ひとこと言いた～い

みなさん、こんばんは。昨日は蒸し暑かったですね。

社内で席替えもあったので随分汗をかきました。

こちらは歴史小説です。

風聞き草墓標
諸田玲子

荻原重秀も知る人ぞ知るキャラクターなので、知らない人にはまず説明を。五代将軍綱吉の時代の勘定奉行（ソフトではない）で貨幣改鋳を行ったが、将軍が代替わりすると、六代家宣に仕える新井白石と対立し、遂に勘定奉行を罷免されてしまう。絶食して自害したとも言われているが、死の真相は明らかではない。小説はここに目を付けた。

　六代が病死し幼少の七代将軍・家継も亡くなり、時代は八代将軍吉宗へ。大岡越前守から真相を暴くよう頼まれたのは、荻原重秀の息子・八郎と結婚するはずだったせつだ。てっきり架空の人物かと思っていたら、実在したらしい。父親が重秀の部下であったという設定も事実だが、息子の婚約者という設定にしたのは虚構だ。男性主人公にすれば「正しい政のあり方」という理ですぐに答えが出ただろうが、女性主人公にしたことで、親子の情と元婚約者への情という二つの感情に揺れる面白さが出せた。物語はせつの佐渡への道行＝現在パートと、せつが佐渡行きを実行するまでの経緯＝近過去を交錯させて描く。若いイケ面武士との道行きだったため、心が揺れる場面もあって期待したが、そちらの不確定要素は無し。

　風聞き草とは萩の異名で、荻原重秀を指す。一旗本に過ぎなかった白石が正徳の治を為せたのも、側用人間部詮房の引き立てがあったからだ。かつて荻原を糾弾した白石が吉宗時代になると排斥されるのは、因果応報めいている。


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