映画・海外ドラマ・本　ひとこと言いた～い

みなさん、こんばんは。またフランスでテロが起きましたね。
テロという言葉自体珍しいものではなくなってしまいました。
この映画もテロに傷つくアメリカを舞台にした作品です。


ランド・オブ・プレンティ
Land Of Plenty

監督＆脚本
ヴィム・ヴェンダース

出演
ミシェル・ウィリアムズ

　アメリカに生まれ、アフリカとイスラエルで育った少女ラナは、イスラエルから“アメリカの伯父さん”に会うために10年ぶりに祖国に戻った。伯父ポールはベトナム戦争の後遺症を抱え、さらに今、たった1人でテロからアメリカを守っている気になっている。ある事件をきっかけに、2人はロサンゼルスからアメリカ横断の旅に出る……。

　まだ薄暗い都会を走る車。窓からはカメラが出てきて、拾った音は車の中に。ポールはトランシーバーで誰かに報告している。町のパトロールをしているが、無報酬であることはすぐにわかる。そしてポールが特に注目して追跡するのはアラブ系だ。なぜならば9.11の実行犯だったから。

　あれから10年以上経ったから記憶も少しは薄れているが、事件当時、やはりアラブ系の人を見ると身構えてしまう所があった。「テロリストと彼等とは違う」と言う事は頭ではわかっている。にもかかわらず、いざ事件が起きると、私達は途端に民族や外見で人を判断する。わからない世界から少しでも早く分かる世界に行きたくて、一番簡単な方法を選んでしまうのだ。そういえば、ナチスドイツはかつてユダヤ人というだけで民族殲滅に動いた。

　アラブ人が同じ箱を頻繁に運んでいるのを見たポールは、彼をつけていって、会おうとしなかった姪と再会する。教会でボランティアをしていたラナの目の前でポールが追っていたアラブ人が撃たれ、二人は彼の遺体を兄の元へ運ぶが、それぞれの目的は違っていた。ポールは悪人を捕まえるため、ラナは家族に遺体を届けるため。ラナも9.11は知っているが、ポールほどの偏見は持たない。「事件を解決するため」と兄に事情を聞いていたポールは、つい詰問口調になって彼を泣かせてしまい、ラナに咎められる。彼も不安なのだ。ベトナム戦争のPTSDからようやく逃れたと思ったら、今度は見えない敵が祖国を襲う映像を目の前で見てしまった。ポールは傷ついたアメリカそのものだ。かつて豊かな地として世界各国から憧れの目で見られていたアメリカが憎まれていたと知って、ラナもまた悪夢を見ていたことを叔父に語る。傷ついたアメリカは、きっと二度と元通りにはならない。目に見える所の傷は癒えても、心の傷は深く刺さってしまった。しかし、その傷の痛みを忘れるために、誰かを傷つけていいことにはならない。私達を安心させるのはただ一つ、真実のみだ。歌に歌われているように。

映画「ランド・オブ・プレンティ」
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