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カテゴリ:日本の作家が書いた歴史小説
みなさん、こんばんは。今日も地震がありました。台風が来るから涼しくなるかと思いきや、めっちゃ暑かったです。9月なのに…。
さて、こちらは松尾芭蕉を中心に描かれた歴史小説です。 芭蕉経帷子 別所真紀子 ある雑誌で時代小説『夏雲あがれ』を上梓した宮本昌孝氏が「時代小説は制約のある中で書くのが面白い。かえってSFを書けと言われたら困ってしまう。」と語っておられた。また、『黒竜の柩』を刊行した北方謙三氏も、「新選組でも歴史書に書かれてない事が、まだある。例えば、土方歳三がいなくなっている時期があるんだけど、その間どこに行ってたかは書かれてない。そういう隙間を書いていくのが歴史小説。」と言われていた。 歴史的事実で埋め尽くされた、何千ピースもあるパズル。そのいくつかの欠け部分をわざわざ探して、その部分を存分に広げる。さらに、細かい制約の網の目を通して出来たものが歴史小説というわけか。ほんに、歴史小説家はある種のマゾヒストではないかと思う。 そんなマゾヒスト、いや歴史小説家の一人が別所 真紀子氏である。彼女は、芭蕉によって俳諧の世界に導かれた乙州(本名又七)・荷月(本名れん)夫婦のうち、妻れんに着目した。といっても、文字どおりの意味で俳諧の世界に導かれたのは、夫である乙州と、その姉で姑、そして芭蕉から認められた歌人智月の方だ。れんは、度々芭蕉を迎える事の多かったこの家で家事をしていたに相違ない。共に俳諧を楽しんだという記録がなく、芭蕉とは共通の会話が成り立たない、住む世界が違う人。芭蕉が「よめご御ほねおらせまことにいたいたしく…」と謝辞を述べていた手紙が残っていた。 ここで著者は小躍りした事であろう。パズルの欠けが見つかった。さらに思いを膨らませた。例え文章には残っていなくとも、出逢ったからには何かしらの言葉のやりとり、心のやりとりがあったはずだ。芭蕉から得るものがあったはずだ。芭蕉という人はそれだけの影響力を持った人なのだから。芭蕉に声をかけられ、弾む心を抑えるれんを心に描き、いや、彼女と完全に同化して、著者はれんを、あえてもう一人の主人公にした。句も『猿蓑』に取り上げられている智月でなく、この手紙と芭蕉高弟其角の『芭蕉翁終焉記』『笈の若葉』に残された一つの句以外、全く歴史上に登場しない女性を。 彼女の夫である乙州も、句は残っているとはいえ、其角・去来等には及ばず、もっぱら「金に不自由しないのがとりえのもの」と師弟等に見られている。傍流の夫乙州と、俳諧にほとんど関わる事のなかった妻れんという、中立的立場にある二人の視点から、芭蕉の最期、最期の地までの遺体を送る旅、葬儀の模様まで描かれる。 昔語りや師の句を論じながら、遺体を連れて淀川を遡り、通夜にて臨終に至る様子を皆で、酒を飲み、語り合う。今とは全く違う昔の葬式のさまが、そこにある。 ああ、人は二度死ぬのだ。人々は昔語りのうちに、その人の死(肉体の死)を少しずつ納得してゆく。それを何度となく繰り返し、いつしか、思い出話を語る人がいなくなった時に、もう一度、本当の死が訪れる。 別所氏のピース探しの様子から見るに、芭蕉翁の第二の死は、まだ遠い先のようである。
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